第162話 新ナビゲーター・三鷹とサイボーグコンビ参戦
「ナビゲーターの話は聞いたぜ大将」
「この男なら適任だ」
「ボガーとヴァンか、一体どうした」
すると2人の後ろにいた、長身細身の、オリーブ色のテンガロンハットと外套を身に着けた優男が前に出る。
帽子の影に顔は隠れていたが、それを彼は帽子の端を指で掴み、そっと上に傾け自身の顔を見せる。
「ハーネイト、久しぶりだな。それとようやく、地球に戻って来られたんだな俺……っておおおう?マジか!」
「嘘……三鷹お兄さん……!」
「三鷹の兄貴!生きていたんだな、心配かけさせやがって!」
「ハハハ、悪かったなお前ら。俺もあの時死んだものと思っていたが、人生何があるか分からんな!お前らが無事で俺も嬉しいぜ!」
ハーネイトに声をかけようとした男だったが、傍にいた響と彩音、翼を見て驚いた顔をしていた。そう、この男は3人にとっての知り合いであった。
この男の名前はウォークロード・ミタカ・スギヤギと言い、本名は三鷹杉也と言う。
矢田神村の出身で、響の父、勇気及び翼の父、大和の2年下の後輩であり、響と彩音、翼にとって、色々と頼りになる年上の男性でもあった。
だがこの男、矢田神村の一連の事件の後桃京に移住し、ある事件に巻き込まれ長らく行方不明であった。その事件こそBW事件であった。
だからこそ3人はこのタイミングで会えるとはこれっぽっちも思っていなかったのであった。
「知り合いだったのか、これは偶然にもほどがあるな」
「マジかよ……こりゃすげえな」
「いいことではありませんかボガー。再会を祝福いたしましょう」
ハーネイトを始め、ボガーとシャックスも驚いたリアクションを見せる。響たちとミタカの顔を見ながら3人は、彼らの再会を喜び拍手していたのであった。
「驚きの、連続だね全く。……ただいま」
「おかえりなさい、三鷹兄さん」
「本当に、今までどこにいたんだよ」
改めてミタカは微笑んで、響と彩音、翼に帰ってきたといい、3人とも彼に抱きついて今まで何をしていたのか聞こうとしていた。
「まさかウォークロードまで連れてきていたとはな」
「おまけでうるさいのがついてきたが」
「え……まさか」
「そのまさかさ、ホテルの騒音クレームに注意しないとね」
ハーネイトはナビゲーター経験のあるミタカを連れてきてくれたシャックスとボガーに感謝していたが、その背後に感じる不穏な雰囲気に、ある人物が断りもなしに来ているのではないかと警戒していた。
少なくとも今来られてもと思うほどの人材であり、ロイ首領とは別ベクトルで面倒なコンビであるという。
特にエレクトリールがその人材を苦手とするが、根はとても善良で誰かのために奉仕する高潔な精神はハーネイトも高く評価するものの、けれど見た目と言動ですべて損しているような男であった。
「ダーーーーハッハッハ!異世界に俺様参上!ん……!機械の体ながら新鮮な空気を感じるぞおおおお!んほおおおおお!」
「少しは自重しろヴァルター。全く、連れがうるさくて済まないな」
ボガーとシャックスの背後にいたのは、サイボーグブラザーズとも称される、ヴァルター・フォン・ゴットフリートという軍人風の男と、赤髪で両手両足が機械の四肢であるメッサー・ゼクス・ヴェイレシュナイダーという若い男であった。
明らかに部屋を破壊しそうなほどのけたたましい笑い声をあげるヴァルター。それを抑えようとする部下のメッサーの2人を見ていた響たちは、終始無言でそのやり取りを見ていたのであった。
ああいう人材まで先生は確保しているのかと思い響と彩音は、彼についてよくやるなと思っていた。
ヴァルターもメッサーも、体の大部分を機械化しているが、これはDGの侵略に巻き込まれ瀕死の重傷を負ったためである。それでも彼らは自分たちと同じような被害者を減らすために精力的に活動に参加している。
ヴァルターは四肢を分離してオールレンジ攻撃を行えるサイボーグで、Aミッションでのクラスはアタッカー、シューター、サーチャーである。
一方のメッサーは腕や足に仕込んでいる振動ブレードによるスピードを生かした攻撃を得意とする。クラスはアタッカーとアサシンである。
「おい、シムカとモルジアナはどうした」
「あいつらは別件で仕事があってな。おかげで金には困らないが」
「近いうちにまた魔獣たちが押し寄せてくるだろう?その対策に追われているのだ」
「そういうことかミタカ、いざという時は俺たちも一旦帰った方がいいな」
「しかし、血徒の動向を追うのも大切です。あの星を見たでしょう。あれは、恐らく……ヴィダールの神柱がいます。もしかすると、血徒は神柱を……?」
ハーネイトの故郷ことフォーミッド界に存在するアクシミデロ星。そこでは一定周期で侵略者の大襲撃が発生するという。その対策のために一時的に帰る必要もあるとボガーらは進言する。
一応保険をかけて彼の率いる組織の約半数は向こう側にいるものの、3000m級などの超大型侵略体が襲撃してきた場合に果たしてそれで対抗できるのかは正直分からない。そう彼は思いつつボガーらにこう指示を出す。
それに付け足し、シャックスはボガーに対してどころか全員に対して重要な話をさらりと口にした。
それは、今見えている、少しずつ近づく災いの星の中にヴィダールの気運、つまり神柱の存在を複数体感じると言う物であった。
「星奈の言っていたことは、やはりそれだったか。分かったシャックス。君にその辺の分析など任務を幾つか言い渡そう」
「私ももっと寝たいのですが」
「あのねえ、状況分かって言ってるの?神柱がまとめてくるとかなったら大変すぎるんだけど」
ハーネイトはボケをかますシャックスの両腕を掴んで揺さぶり起そうとする。しかし彼は、こう言葉を切り返す。
「確証は、ないのです。あくまでそうと感じただけ。今は血徒が何故その星を気にするか、それを探るのが優先」
「まあ、それもそうだな。大将、何かあったときは一旦戻ってもいいんだよな?」
「ああ、その時は帰って応戦してくれボガー。私は今、ここから撤退するわけにはいかない。放置しておけば災厄は私たちの住む世界や他のまだ知らぬ世界をも破壊しかねん」
「しかし、まずは情報整理と開発だな。それまでは迂闊に動かない方がいいかもしれん」
ハーネイトはいざという時は柔軟に対応してくれと各員にそう伝えると、速やかに研究を完成させるため研究室に向かいこもりっきりになる。
その間に次の作戦に向けて鍛錬や休息をとる響たちは、新たな敵との戦いに向けて不安と期待の両方の気持ちを抱いていたのであった。




