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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第98話 CPFプログラム配布と調査計画


 亜蘭と初音は、Cデパイサーをじっと見つめながらこのような装備をどうやって作っているのかが気になって仕方なかった。


「これ本当にあなただけで作ったのですか?」


「うーん、基礎は自分が、それ以外の細かいところは多くの人に手伝ってもらったが……自分1人で毎日約1台作っている」


「これ貴方が全部組み立てて……?」


「それ以前にパーツも作っている」


「そこまでして、これを作っているなんて。凄い装置なのですね」


 簡潔な説明を聞いただけで、この腕に装着するタイプの通信機器が恐るべき技術を持って作られていることを理解したうえで、初音は質問し亜蘭は黙ってそれを見ていた。


「あまりにもけた外れの性能ですね……なくしたら一大事です」


「その通りだ、といっても一度身に着けるとホルダー部分はそのボタンを押さない限り外れないのだが。ああ、普段は存在を無かったことにできる。先ほど教えたステルスボタンでそれが可能だ」


 ハーネイトはそうして、各機能やアプリについて20分ほど説明し2人に指導をした。それを聞いた2人はそれぞれ目をきらめかせ幼い子供のようなまなざしを彼に向けていた。


 それほどに、Cデパイサーの力が魅力的であったと言えるだろう。


「まあ、今はフェスを完遂することに集中しないとな。輝夜たちに声をかけて、打ち合わせと練習だ」


「そうね、美佳と裕奈にも」


「今のことを他の一般人に話したら、それはすぐに回収するからな。今日はひとまず、お開きでいいかな?フェスは3日後だったな」


「分かった。これは極秘の仕事だと言う事か。確かに、紅き流星もあの霊も、見えない人には見えないし、無用なトラブルは避けないといけない」


「そうです亜蘭さん。あと初音さんも気を付けてください」


「はい、極力隠しておきますね。変なトラブルは避けたいですもの。それとフェスは確かに3日後ですよ。今回は珍しいバンドも来るそうで日本各地でも盛り上がっていますよ」


 それから2人はハーネイトにある情報を提供した。それに多くの人たちがこの春花を訪れることも話した。と言っても、昔ほど人の行き来ができるわけではない。5年前の事件の爪痕が尾を引き、日本国内の移動だけでも制限がかかっているという。


「全員がここに泊まるわけではないと思いますが、刈谷不動産及び刈谷ホテルはとても有名ですので、ある程度お金のある人たちなら泊まると思います」


「そうか、ありがとう。……では私は仲間を連れてフェス会場周辺の調査を行う」


「調査だと?何かあるのか?」


「ああ、化け物の巣というか、異世界につながる通路への門があるとしたら、どうする?」


 ハーネイトの話に2人は釘付けになった。特に亜蘭はマネージャーが幽霊らしき存在によりダウンしているため、どうにかしたいという気持ちも合わさり戦いたいと思っていた。


「何それ滅茶苦茶気になる!彩音たち、そういうところに行ってるのよね、いいなあ」


「あのねえ、みんな命がけで戦っているのだ。一応私がいるとはいえな」


「はい……そうよね、彩音も、うん」


 ハーネイトの言葉に初音はハッとして、しゅんとなった。


 妹も含め、友達や先生方が被害者を増やさないように奮闘しているのに、自分は浮かれている、それに気づき恥ずかしくなったのであった。


 それを察したハーネイトは、初音について根は誰かのために想える、とても思いやりのある優しい人物なのだなと思い少しニコッと笑った。まるで幼少期の自分と何か似ている感じがしたからである。


「取り合えず、必要があった時に連絡させてもらう。……貴方もいろいろ、抱えているようですが互いに無理をしないように、ですよ」


「これで失礼します。今日は色々ありがとうございました」


「ああ、Cデパイサーの中にはゲームアプリもある。私たちの仕事をゲーム形式で覚えてもらえるようにね」


 そうしてある程度説明してから、2人と話を終え部屋で考え事をしていたハーネイト。すると伯爵が調査などから帰ってきて、けだるそうにハーネイトの対面にあるソファーでくつろぐ。するとリリーは伯爵の隣に座り3人で話をする。


「どうよ相棒。新しい仕事の件は」


「いやな予感しかしないよ。何でこう、面倒なことばかりなんだ」


「だよなあ。なんで異界の地でフェスを手伝えとか」


「でもまんざらじゃないって感じね」


 伯爵がそうぼやくが、実際は楽しみにしているのではとリリーに指摘されると、困った表情を見せる彼は互いにからかいあっていた。


「リリー、先日の件だが、事態は予想以上に悪化していると思うのだ」


「ええ……まさか魔界人が薬まで売っているとはね。しかも向こうの情報がいまいちわからない以上、どうしても後手後手よね。復興同盟も、血徒もどんな戦力があるか分からないと勝負に出るのは難しいわ」


「判明しているのは、ソロンというヴィダール神柱を復活させようとしている奴らが、霊界の騎士を洗脳し手下にし、ソロンの生贄となる存在を作ろうと躍起になっていることだ。しかも血徒も噛んでいる可能性が高いと」


「それが分かっていても、敵の拠点がまるで足取りがつかめない」

 

 3人はいつになく真剣で、深刻そうに話をする。事実、今言った通り敵より先に手を打っているかというとそうではない。


 どうしても対応が後手に回ることは分かっていたが、まだ敵の本拠地が掴めていない。それとソロンを蘇らせる真の目的が分かっていないことがここまで影響があると思った3人は、ある結論を出した。


「大規模調査隊を組み、数チームで手分けして異界空間内を探す、か。大体の侵略者はよほどじゃねえ限り一歩手前で準備をして攻め込む以上、そこで防げばいい訳だ」


「先生、お取込みのところ失礼します」


「時枝と、間城か。どうした?ここまできて」


 事務所を訪れた時枝と間城は、ハーネイトに対しある質問をする。


「あの強化プログラム、いつ配布されるのですか?」


「この前の戦闘で、先生が起動した強化するためのプログラムなんですが」


「RGエクステンダーか、あと少し調整がいる。それが出来次第正式版を各自のデパイサーに配布する。あれは各自でそれぞれカスタムしないと本来の能力を発揮できないのでね」


 彼らを始め、響たちも新たな機能について関心が高かった。今言ったことは追ってメールで伝えるとハーネイトはそう説明する。


「分かったわ先生。それと、例の霊量超常現象クォルツ・パラノーマルフェノメノンについて教えてほしいな」


「ヘルプに載せてなかったな、すまない。今日中に配布しておく。既に使用できるが、絶対に使用は異界空間内だけにしてくれ」


 2つの強化システムについてそう説明したハーネイトは、2人に自由にしていてよいという。


「ではでは、亜里沙さんのところに行って温泉に入りましょう!」


「本当に好きだな間城は。……先生、星奈さんの予言は恐ろしく正確です。何かしらの被害が出る前に、体調面についてもう一度確認を」


 間城は嬉しそうにそういい先に部屋を出た。すると時枝がハーネイトに対し、ある話をした。

 

 それはまだ星奈が意識を失う半年前のことであった。彼は試しに星奈に占ってもらったところ、災いが迫っていることを知り、警戒していたが3日後に工事中のビルから鉄筋が落ちてきて、あと一歩遅かったら命はなかったことを話した。


 それは占いで出た結果と同様であり、ハーネイトの結果も恐らく当たるに違いないという考えから心配になって話をしたのであった。


「……分かった。そういうことがあったのか。気を付けておこう。時枝も後は好きにしてくれ」


「俺は修行空間内で鍛錬してから温泉を利用しよう。先生たちも体の方にはどうかお気を付けて」


 そういい、時枝は例の異界空間こと鍛錬の部屋にて、先に鍛錬をしていた黒龍らと基礎戦闘練習を行いミチザネとの連携を確かめていた。


「今いる全員が、うまく具現霊を使えるようになれればチームを分けての運用を本格的に行えるし、色々戦略の幅が広がる」


「んだなあ。俺たちも楽だぜ」


 その時ミカエルも事務所を訪れハーネイトに帰還申請を出した。時枝と間城は驚くも、仕方ないと言い色々お世話になったことについて感謝の言葉を送った。


「一旦帰るの?」


「ええ、母さんと妹が心配よ。短い間だったけど楽しかったわ。後はロイ首領にどう報告しようかしら。CPFの件は彼女が聞いたら鼻血吹き出しそうな感じで嬉しがるでしょうね」


 ミカエルは意地悪そうににやにやしながらハーネイトに言い彼を困らせる。今回の研究で霊量子でも大魔法の再現ができるようになり、しかも自分で一から詠唱をせずとも、高度な魔法を運用できるようになったことは、魔法界に新たな激震をもたらすことになる。


 それを理解していたが、ハーネイトはそれでも今後の激化する戦闘や、仲間たちの要望を踏まえたうえで理論を構築しなおし、魔女たちの協力の元完成させた。


 問題は、彼の友人というべきか、あるいは後輩というべき存在のロイ首領という人物にこの話が伝わらないようにしたいということであった。


 なぜならば、ロイ首領が興味を持ちすぎてべったりくっつくのがハーネイトにとって苦手だからである。とにかく色々うるさくしつこい一面がロイという人物にはあるようで、思い出すたびハーネイトは浮かない顔を見せていた。


 だが、彼女には金銭面や情報面などで昔から頭が上がらないため、それが彼の表情を更に曇らせる。


 ミカエルはハーネイトに対し、体調面の管理はしっかりしてと言ってから部屋を後にした。すると偶然時枝と間城にホテルの廊下で出会い、軽く話をしていた。


「そうですか、ミカエルさん、例の超常現象の件、寝る間も惜しんで研究してくださってありがとうございました」


「そうよねえ、お肌がボロボロになるわね。でも、みんな無事に生きて帰ってきてね。そのためにお姉さんたち頑張ったんだからね。私たちとの約束よ」


「はい、魔法の研究の方、ありがとうございました!」


「フフフ、ではまたね」


 そう伝えたミカエルは、2人に別れの挨拶をしてから例の異界空間に飛び込んで元の世界に戻っていったのであった。


「行っちゃったね」


「ああ、だけど先生の仲間はいい人揃いだな。いろいろ勉強になる」


「そうね。本当に……、面白い人たちね。さあ時枝君、少し遊んでから帰りましょ?」


「ほう、何で遊ぶのだ?」


「ゲーセンで格ゲーしよ?」


「いいだろう、勝負だ!」


 2人はミカエルを見送った後、ホテル内にあるゲーセンエリアでブラッドたちと遊んでから帰宅し宿題を終わらせてから、苦手分野の勉強や、Cデパイサーを使っての戦闘に関する知識の勉強などをしていたのであった。

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