プロローグ 絶対創造神と2人の女神の息子
地球とほぼ同じ時間軸を持ち、同型の惑星が多数存在する異世界「フォーミッド界」そこには地球が生まれるよりも遥か前から、とある超越的存在の伝承が伝えられていた。真の世界創造に関わる「ヴィダール・ティクス神」は、幾多の内乱の果てに一人の創造神「ソラ」が主権を握り、その過程で二人の戦士が生を受けた。その戦士である息子と、ソラの戦いから今作の話が始まります。
「はあ、はあ…。た、しかに。息子たちの思いは伝わった、わ。そこまでして、人の住む世界を守りたいのね。……参ったわね。」
時は20XX年。今から約9か月前、ここは人が普段決して入れない、とある絶対創造神である女神の聖地。そこにある美しく金色に、鮮やかに輝く小麦畑のなかで、二人の男と一人の女性が息を切らしながら対峙していた。
「あれだけ辛い思いをしても、それでも…。」
「へっ、それに人がいなくなれば他の世界のバランスも崩れちまう。俺たちは多くのことを学び、人は不完全だからこそ、これから伸びる可能性を秘めていると、そう実感したんだ。」
「それに、今ではそれでもよかったと。私は誇りに思います。だって、かけがえのない仲間がいるからです。」
彼らは女神とその息子たちであり、先程まで人間の世界を含めたあらゆる世界の命運をかけた勝負を繰り広げ、息子たちの今までの思いや体験を形にした「人理の盾剣」により女神の邪悪でひねくれた心を改心させ、戦いに勝ち人類の未来を守ったところであった。
「だから、貴女の代わりに私たちが、人間界を監視します。」
「そのためなら、何でもする。だからもうあんたは外から見ているだけでいい。」
息子たちは戦いでの彼女とのやり取りの中で、女神が今までどれだけ人の世界の管理が難しく、手を焼いていたかを理解した。そして互いにそう言い述べて、女神の代わりに自身たちが世界を守ることを誓ったのであった。
「そう、ね。そういや、今何でもするって、いったよね?」
「あっ。」
「だったら息子たちよ。今から女神代行として、人理の守護者となり、世界を守る存在として未来永劫働くのです。」
しかし女神は調子にのり、息子二人にまたも難題を突きつけてきたのであった。
「ふぁあ?み、未来永劫、だと?」
「どういう、ことだ。まるで意味が分からんぞ!」
女神の唐突な言葉に二人とも唖然とした顔になり、数秒間理解が追い付かず固まっていた。それに追い討ちをかける女神は更にここいい放つ。
「その通りに決まっているじゃない。あなたたちは世界の維持、バランスを保つために戦う兵器としてこれからも戦い続ける社畜よ。」
「は、はああああああ?」
「二人ともそんな顔しないで。これもあなたたちが選んだ答えじゃない。それと人類殲滅兵器としての任を、今をもって解くことにします。」
女神の説明を聞き、思わず再度声をあげる息子たち。そして、彼らの作られた理由であった、人類を抹殺する使命を現段階をもって終え、先述した女神代行、人理の守護者として新しいスタートを二人は切ることになったのであった。
「なあ、伯爵。」
「ああ、相棒。」
息子二人は互いに顔をじっと見合わせた後、
「俺たち罠にはめられただろ!」
と大きく声を上げ、その空間に、非常に悲しい叫び声がこだました。
「そういうことで、もし不甲斐ないところ見せたり、あまりに面倒かつ手に負えないことになったら、その時はわかるね?」
「ひ、ひぃ!わかっていますよ母上」
「戦った褒美がこれとか、最悪だろ。休みまともにとれないぜ」
「ああ、さようなら。私の休暇…」
そして女神の脅しに怯みながら、二人は互いに体を抱き合って悲しみに暮れていたのであった。
これが、造物主であり母である絶対創造神に反逆した息子二人の結果であった。
人理を守るため、世界を守るため、女神の代わりに戦い平定を保つ「人理の守護者」として、永遠に働く定めをこれから二人は背負うことになった。
そんな彼らの女神代行異世界業務録、これより始まります。
女神代行とは、人理の守護者とは。今まで誰も仰せつかったことのない業務に挑む二人は、試行錯誤しながらこの難題に立ち向かっていくことになります。