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フラッシュバック!!!!  作者: さくらだゆうすけ
13/13

未払いセックスレス11


 ***


 気がつけば、僕は自室である物置小屋にいた。

 どうやら、車で寝てしまったあと、ハマーに運ばれたらしく、服をきたまま、僕は布団に寝かされ、上から乱雑に毛布をかけられていた。


 ベッドサイドの目覚まし時計は午前六時をさしている。僕はうなりながら起き上がる。

 目をこすり腕をぐっと上に伸ばしたところで、意識が一気に覚醒した。

「おはよう、兄貴」

「え?御風???!」

 なんと、僕の布団と平行になるように、ネグリジェ姿の御風が寝そべっていたのだ。ライトパープルのシルク製のそれは、ある常連客が月に一度新品をくれるのだと言っていたっけか。いや、そんなことよりも、なぜ、御風がこんな時間に僕の部屋にいるんだろう。

「そんなに驚くこと?寝床に侵入なんか、アンタ私に何度もやらかしたことじゃない」

「……でも、ほら、僕は御風に近寄っちゃいけないし、そもそも、僕のこと嫌いでしょ……?」

「うん、嫌い。大っ嫌い」

 息を呑むような笑顔で御風ははっきりと言った。けど、言葉とは裏腹に毛布の中に御風の長い脚が侵入してきた。

「ちょっと……?」

「ん?」

「ん?じゃなくて、御風の、あ、しが……僕の……」

「なあに?聞こえないなあ」

 御風はにまにまとアニメみたいに笑顔をはりつかせ、大きな瞳をくりくりさせながら、僕の表情を伺う。その間も、毛布の中でネグリジェからでた生足を僕の下半身に絡ませ続けた。

 なんで僕はこの場に及んでジーンズなんか履いてるんだろう。

 いますぐ脱いで、彼女体温をじかに感じたい。けど、両手は敷布を後ろ手に掴んだまま動かないし、体も固まったままで、僕にできることといえば、歯を食いしばって御風を見つめ返すことだけだ。


「ふふ、兄貴の脚、相変わらず細いね。でも」

「ん……?」

「やっぱりムショで運動とかしたの?ふくらはぎとか硬くなってんの、デニムの上からでもわかるよ」

「み、かぜ……」

「あと、腕とか、胸板とか。前みたいにふにゃふにゃかと思ったけど、ちゃんと筋肉がついて引き締まってる。くやしいけど、兄貴、案外いい体してるよね」


 指先で僕の腕や胸をちょんちょんと品定めするようにつつく。だんだんと目が慣れてきて、登りかけた朝日の白びた光の下、御風が薄く化粧をしているのがうかがえた。


 僕の頭は激しく混乱している。

 同時に興奮もしている。硬く締まった中央がその証拠だ。

 でも思考回路なんかとっくにショートしているし、なぜここに彼女がいるのか、目的は何かなんて、なんかもう、どうでもよくなった。


 御風は毛布を剥ぎ取り、首に腕を回して僕の上にまたがった。つやつやのプラチナブロンドからは、シャンプーと思わしきローズっぽい匂いがふんわりと香った。

「あ、あ……あ……」

 全身をミイラみたく包帯でぐるぐる巻きにされたみたいだ。

 まともに口なんか聞けないし、相変わらず体も動かない。

 ただ僕は御風といっしょに倒れてしまわないように、腹筋にふっと力を入れた。だって、二人で布団の中にエスケープなんて冗談でもやっちゃいけない気がしたから。

 特にあんなことを思い出したあとは。


「お酒、たくさん飲んだんだって?」

 とろけるような声で御風は尋ねた。

「う、ん……わかんない、けど……」

「初めてなのに?」

「い、や……その……」

「ダメじゃない。私の目の届かないところで勝手な真似しないで」

 耳元に唇を寄せ、御風は囁く。


「兄貴は、ぜんぶ、私のものなんだから」



 ***


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