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1-2 シャリオンワールド

PSMLを起動、今度は10分程度、時の川を見ていて目的の世界へやってきた。

スカートのポケットの中を確かめて見る。

確かにスマホのような物が入っているホームボタンを押してみる。


『シャリオンワールドへようこそコラ。シャリオンワールドを案内するコンシェルジェ・キャスターのルッコラだコラ。よろしくコラ。』

「ルッコラね。よろしく」

『こちらこそ、よろしくコラ。現実の世界のスマホにシャリオンワールドのアプリはダウンロードしたコラ?』

「いや、いや、シャリオンワールドって名前も、いま知ったばかりだから……」

『そうコラ。シャリオンワールドのアプリをダウンロードすれば課金アイテムが使えるようになるコラ。ゲーム内の他のユーザーとアクセスしたり、地図を購入したり、アイテムを購入でるコラ』

「そうなんだ。ひとまずこのお金の価値を教えて」

『わかったコラ。コインを床に置いて写真を撮って欲しいコラ』


コインを革袋から取り出すとスマホで写真を撮った。


『1,036ルクセンコラ。小銀貨1枚、中銅貨3枚、小銅貨6枚あります。基準は小銅貨から始まって十進法で小中大とコインが変化して銅貨、銀貨、金貨、プラチナ貨の紙幣の無い社会コラ。』

「どの世界も紙幣がないの?」

『どの世界もではないコラ。この世界は紙幣がないコラ』

「お金はこの世界で働いて作るのよね」

『この世界で働いて収入を得る他には現実世界で課金してもらうことも出来るコラね』

「1,036ルクセンってどのくらい価値があるの?」

『そうコラ。この宿は1日200ルクセンだから、パンが20から30ルクセンで買えるので3日間は持つくらいのお金コラ』

「なるほどね。ひとまず、ここを出て買い物の出来るところに行ってみましょうか。でも、ルッコラって見られると不味いんじゃ無い?」

『NPCには私の姿も声も聞こえませんから安心して欲しいコラ。』


ひとまず、市場へ向かうことにした。

外へ出ると抜けるような青空が待ち構えていた。


「異世界だね。ヨーロッパに旅行に来たみたい」

『ここはキミだけに作られた街コラ。市場はこの道をまっすぐ行けば着くコラ』

「大きい街だよね」

『9,232人が住んでいるコラ。小規模の街コラ』

「へぇ、賑わって来ているね。あの辺が市場?」

『そう、このあたりがこの街一番の市場コラ』

「この街には何人ユーザーがいるの?」

『キミだけだコラ』

「えっ、私だけ? だってあんなにいっぱいの人が……」

『あれはビックデータから抽出したオーディエンス・アクターと言われるAI人工知能だコラ』

「私の為だけにこの街はあるの?」

『当たり前だコラ。この街を発展させるのも現状維持にするのもキミ次第だコラ』

「そうなんだ」

『シャリオンワールドではユーザー1人からスタートするコラ。コミュニケーションは課金になるコラ。ユーザーが繋がるにはお金が掛かるコラ。この世界でお金持ちになれば世界は広げられるコラ』

「なるほど、でもどうやってシナリオは進むの?」

『聞きたいコラ?』

「昔、シナリオ書いていたからね。知りたい」

『白けちゃうかもコラ』

「それでも聞きたい」

『わかったコラ。VR仮想現実では最初から舞台やキャラクター、背景が作られて入るんだけど、DR夢想現実のシャリオンワールドは最初にユーザーが要望した内容にビックデータを使って近い世界の大枠を作り上げて、ユーザーから見えているところだけ作るコラ。だから、今見ている空は見えているところだけしか青空がないコラ』

「えぇー、そうなの」

『DR夢想現実ではスコトーマとRASの2つ認識で世界が作られていくコラ。スコトーマは見えているけど、認識しない人間の能力コラ。いままでに歩いてすれ違った青い服を着ていたのは何人か覚えているコラ?』

「えっ、意識していなかった」

『そう、人間は意識しないと認識できないコラ。ちなみにすれ違ったのは3人で青い服はこの街の行政に関わるアクターだコラ。そしてRAS(Reticular Activating System)は人が意識したとき意識のアンテナがそちらに向き、ターゲットロックされる仕組みだコラ。いま、青い服の人間を目で追ったコラね。それがRASだコラ』

「あぁ、言われたから青い服の人を目で追っていた」

『この街は白地図のようなものだコラ。キミが通ったところだけ色が付いていくコラ。そして、キミが話しかけた人間がオーディエンス・アクターからガイド・アクターか、サポート・アクターに進化するコラ』

「ガイド・アクター?」

『AI人工知能はここでは3種類あって、ビックデータから作ったオーディエンス・アクターと呼ばれるステレオ的なAI、ギルドの受付や武器屋のおやじのような固定的な思考のサポート・アクターAI、一緒に冒険に出て闘って個性が有り人間臭くシナリオを動かしていくのがガイド・アクターAI。オーディエンス・アクターはキミと接触することにより、ガイド・アクターか、サポート・アクターに変化していくコラね』

「じゃ、自分でシナリオを作っていくってこと?」

『そうとも言えるけど、この世界には3人の神のようなものがいるコラ。世界を作るときに設定しているコラ。もしくはお任せで設定されているコラ』

「神?」

『神でわかりづらいなら総監督と作画監督と脚本家がいるコラ。作画監督は設定した時代に合った建物や服をデザインして用意するコラ。脚本家はイベントやアクシデントを用意するコラ。そして、総監督はユーザーの幸福感を上げるにはどうしたらいいか常に考えているコラよ』

「ユーザーの幸福感?」

『にゃごママはネコが好きコラ?』

「ネコは好き!飼っているよ」

『あそこにネココラ』

「えっ! あぁー、ちっ、ちっ、ちっ、コッチにおいで。イイコ、イイコね」


ネコを拾い上げて抱き上げた。


「ミースケ、あっ、ミースケ」


小さな女の子が走り寄ってきた。


「ミースケって言うんだ。はい、ミースケ。良かったね」

「ありがとう……お姉さん。ミースケ、探していたんだ。早くお母さんに知らせなきゃ、ありがとう、お姉さん!」


女の子はネコを受け取ると走り去っていった。


「可愛いね」

『この瞬間にネコというペットがこの世界に作られて、ペットショップも何件か街に出来て、保健所のような施設も作られたコラ。そしてネコは幸福感の1つとしてカウントされたコラ』

「じゃ、いままでこの世界にはネコはいなかったんだ」

『そう言う事になるコラね』

「ここが一番の繁華街?」

『そう、ここが一番の繁華街コラ。どこへ行きたいコラ?』

「仕事柄、まずは酒屋さん」

『酒屋さんはその角が酒屋さんコラ』

「いらっしゃいませ」

「わぁ、すごい色々とお酒揃っているのね」


次々と並んでいる瓶を手に取っていく。


「お姉さん、試飲は出来るの?」

「試飲ですか?当店では……」

「出来ないのね。買うからその場で飲ませて」

「それなら大丈夫です」

「これはビール?これはワイン?ハチミツ酒?それ以外の大麦、葡萄、ハチミツ以外の醸造酒ってあるの?」

「それ以外ですか?じゃ、これ林檎です」

「それ以外は?米はないの」

「米ですか?ないですね」

「じゃ、蒸留酒はあるの?」

「じょうりゅうしゅって何ですか?」

「なるほど、文化レベルがわかった。お姉さん、この3本、これで足りるかしら?」


小銀貨をカウンターに置いた。


「はい、お釣りが出ます」

「私、ちょっと外に出るからグラスに注いでおいてくれる?」

「わかりました」

にゃごママは酒屋の外に出た。

「ルッコラ!」

『ハイコラ!お呼びですか』」

「ここが一番の酒屋?」

『ここがこの街一番の酒屋ですコラ』

「じゃ、日本酒は無いの?」

『無いコラ』

「冷蔵庫は?」

『この世界ではまだ無いコラ。でも、課金アイテムならあるコラ。課金アイテムなら冷蔵庫も、電子レンジも、温水洗浄便座もあるコラ』

「なるほど、すごーいチートね。それで文化が壊れないの」

『文化レベル以上のオーバーテクノロジーはこの文化の人には見えないからコラ。文化は壊れないコラ。最低、みんな温水洗浄便座は買うコラ』

「そうなんだ。戻るわ」

酒屋に戻った。カウンターに瓶とグラスが3組注がれて並んでいた。

「これがビールね。ホップ使ってないんだ。これがワイン、泡立っている濾過がキチンとされていない?アルコール分低いんだ。これがハチミツ酒か。これはイケルね。失敗しようがないか」

「どうですか?」

「面白い」

「面白い……ですか?」

「残ったのは包んでくれる?持って帰る」

「はい」


布袋をおまけに付けて包んでくれた。


「アラン酒商会のルーシラです。また、来てください」

「にゃごママよ。また来るよ」


アラン酒商会をあとにした。


「ルッコラ!」

『ハイコラ。何だコラ』

「この世界、少し楽しめるかもしれない」

『それは良かったコラ』


シャリオンワールドの二日目が過ぎようとしていた。

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