小五~渾名~
仕切り直しである。
サカキ=ウエハル。クサビ=フミカ。ハカマ=フウ。ジョウドウ=キズナ。そして僕。五人が図書室のテーブルを囲んで座る。
「今月のお前の渾名は『ソング』だ!」
「あっ、あだ名?」
しかも今月の、とはどういうことだろう。僕の疑問に反して、ハカマ=フウと幼馴染であるらしいジョウドウ=キズナとサカキ=ウエハルは、
「ハァん、なるほどな」
「……ふん。いいんじゃないか」
と、話の内容を理解したらしい。僕にはよく分からなかった。
「どういうことなんだい?」
「……つまりさ、クラスの奴らは、お前の名前をからかってるんだろ」
「ンなら、周りがお前の本名を呼ばねえ空気を作っちまえばいい。ってことだろ?」
「そうだ! 逆城もお嬢もわかってんじゃんか! まあ、だから、俺達が毎月お前に新しい渾名を付けて呼びまくるってことだ」
「なるほどぉ。みんな頭いいね」
僕と同じで、三人と知り合ってそんなに長くないクサビ=フミカが僕の代わりに納得する。
「じゃあ早速。よろしくね、ソングくん」
その一言に心臓が窄んだ。名前を呼ばれるよりも、ずっとこそばゆい。恥ずかしくって、体中を掻き毟りたかった。
これが僕の、人生最初の渾名になった。たったこれだけのことで、彼らを友達みたいに感じて。たったこれだけのことで、彼らと友達になりたくなった。
せめて僕も、皆のことはファーストネームで呼び返そう。
「うん。よろしく、クサビ」