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いつかの花  作者: 憂木冷
11/11

いつかのいつか3


 タイムカプセルの底から出て来た五通の封筒。

 七年越しでそれを開く日が来た。

 いつかの僕たちが、今の僕たちに、何かを伝えたくて、今よりずっと下手くそな字で綴った手紙。

「なんかドキドキするねっ、キリシマくん」

「うん、本当にこれを開く時が来たんだね」

 きっと、いつかの僕たちは不安だったはずだ。これを埋めたきりもう会えなくなるかもしれない。あの門を飛び越えてこの校舎に入ることは、二度とないのかもしれない。この封筒は、開かれないのかもしれないと。

「それにしても、ホントに覚えてネェもんだな。なんて書いたんだったか」

 本当に、すっかり忘れていた。あの時持っていた不安なんて、再会した後も……再会する前さえも、忘れていた。

「…………、七年も前だしな」

 それが長いのか、短いのか。どちらとも言い切れない。だけど、やっぱり長かったのだろう。僕らがいろいろなことを忘れてしまう程度には。

「安心しろって、七年前だろうが、俺ならきっとすげぇ面白いこと書いてるに決まってるゼ!」

 そうだな。今なら「安心しろ」って。声を掛けることができるんだろうな。いつかの僕に声を届けることはできないけれど。不安で不安で不安で不安で不安で不安だったあの日に「何にも心配はいらない。僕たちは、未来の僕たちは、五人そろって楽しく生きてるよ」って言うことは、今ならできるんだ。

「誰も、んな心配してねぇよ」

「そうそうっ。もうキズナちゃんのアレでおなかいっぱいだよ!」

「…………、あれ以上を期待するのは難しいな」

「お嬢、よかったな! おいしくて!」

「埋めるぞ?」

 話が進まないメンバーだ。

「ほら、読もうよみんな」

 だけど僕にはこの場所がいい。

「うわっ、お嬢、字汚っ!」

「っせーな、お前はどうなんだよ!」

 きっと、ずっとは続かない。

「…………、封。いったい何枚書いたんだ?」

「お前ら全員分あるみたいだゼ!」

 その不安は、いつかの僕も、持っていたはずだ。

「な、なんか封くんの読むの怖い。自分のから読もっと……」

 忘れてしまうことかもしれないし、一度忘れてしまったことかもしれない。

「がーーーーーーん!!」

「どぉした? 文香」

「ん、どれどれ見せてみ!」

 それでも、いつかの僕に言いたい。

「あ! ちょっと封くん!!」

「なになに「大人になっても私は華奢きゃしゃですか?」……華奢、平たく言うとぺちゃぱいだな!」

「封くん!!」

「ふっくら言うとおっぱいだな!!」

「ァア!? 下らねぇこと言ってんじゃねぇよ。平たく言おうが、ふっくら言おうが、文香が平らなことには変わりねぇだろうがっ!!」

「キズナちゃんっ!!?」

 何回さくらが咲いたって。

「…………、キリシマはどうだった?」

 何回さくらが散ったって。

「ん、大したことは書いてないかな」

 僕らの命が尽きたって。

「ハルくぅん。二人が虐めるよぉ」

「…………、事実なんだから、気にしても仕方ない」

「ガァァァァァァァァァァン!!」

 いつか僕が見た夢は、ずっとここで咲いているのだろう。

「ね、僕にもみんなの読ませてよ!」

 咲き、続けるのだろう。



『僕はみんなと音楽がやりたかった』



 やはり、大人数での会話と言うのは、楽ではないですね。正直、このセリフ誰が言っててもいいよな、なんて思うシーンもあったりしますが、、、一応喋り方に特徴を付けたつもりです。

 いつも通り、と言うか、いつにも増してプロットを書いていないのですが、今回は一文字たりとも書いていないのですが、なぜか今回は、人間関係についてはかなり考えてある方です。だから、五人が受験を放棄してバンドを続けるにあたって、親との対立で楔文香が鬱々と悩んでいた話や、常道絆の家庭事情や、逆城植春が幼少期からどう変わって行ったかの話、それと伏線的に登場した謎の少女と袴封との関係とか、書こうと思えば書けるし書きたいのですが……なんかあまり意味がない気がするので書かないと思います(笑)。

 自分的には「綺麗に着地はしたけれど……ここはどこだ?」と言うのが書きあげた印象です。まあ、降りる場所を考えていないまま降下した僕がいけないのですけれどね。

 それではみなさん、読了。お疲れ様でした。

 いやいや、ありがとうございました。ですね。

 それでは。

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