いつかのいつか1
ヒトも会話も多いです。
お好きな読み方と、
お好きな感じ方を。
美しくないのは嫌だ。格好よくないのも。
だから、美しくない事はしないし、格好よくないこともしない。
それが僕の正義。
けれど、いつだって誰だってどんな状況でだって自分の正義なんか貫けない。どう想っていたって、汚ないことをするし、ダサくもなる。
正義はある。
だけど貫けない。
だから。
僕は正しくない。
……そう、そこまで単純に考えている訳ではないけれど、やはり葛藤はある。きっと僕だけではないだろう。
周りの皆も同じことを少なからず思っているはずだ。
こんなこと、やってはいけない。分かってる。分かってる。分かってはいるのだけれど、正義を持っているだけで正しくない僕らは、今。
夏の夜、七年前に卒業した小学校の校舎裏で穴を掘っていた。
フリーター五人が集まって、スコップで、土をザクザクと掻き分ける。
小学校を卒業して。
中学校を卒業して。
高等学校を卒業して。
大学に進むわけでも、就職するわけでもなく。勿論、大学浪人しているわけでも、職業修行中というわけでもなく。
ただ生きるのに必要なモノをアルバイトをして稼いで、生活している。
みんな馬鹿だと思った。
一番馬鹿なのは最初に言い出した僕だということは分かっているけれど……それも半分以上は冗談みたいなものだった。
ひとりは天才だった。
ひとりは圧倒的なリーダー体質だった。
ひとりは寡黙で情熱的な仕事人だった。
ひとりは気弱で貧弱で、それでいて磐石な精神を持っていた。
僕は……彼らを巻き込んだ。
僕が邪魔をしなければ、みんな失敗とは無縁の人生を送れたはずの人間だ。
僕とは違う。
なのに今こんなことをしている僕含めたこの五人を、僕は心底馬鹿だと思う。