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新たな出会い

(うわぁ~!ここがジュラ紀の世界かぁ~!)


 時代は2xxx年…タイムマシンが一般に使われるようになり、過去への時空旅行が容易になった時代…


 竜崎大奈(16)は、ジュラ紀後期―1億5千万年前―の北アメリカへの日帰りツアーに参加したのだ。この時代のタイムマシンは毎日電車のように出ており、いつでも好きな時代にタイムスリップできるようになった。とりわけ恐竜が好きな大奈は本物の恐竜を見たいがために、なけなしの貯金をはたいて高いツアー代を支払ったのである。


「それにしても今とはずいぶんと違う環境ね~」

「見て、大きな木がたくさんはえてるよ!」

「立派な裸子植物だな、今とは植生が大違いじゃ」


 大奈以外のツアー客も大はしゃぎである。そこに、


「見て!恐竜がいるよ!」


 ツアーに参加した小学生くらいの男の子が指をさしてそういった。


「本当ね、角が3本あるわ!」

「トリケラトプスじゃろう、昔よく図鑑で見たわい」


「トリケラトプスっ!?」


 大奈はうっかり大声をあげてしまった。おかしい。トリケラトプスは白亜紀後期に生息していた恐竜、ジュラ紀には存在しないはずだ。子供が指差した方向を見てみたが、3本の角、首の周りを覆う襟飾り、体長9メートルはあろう巨体、間違いない。トリケラトプスである。

 ツアーガイドも同じ理由で驚いていたらしい、ツアー客に解説はしているが混乱している様子が見られた。大奈も不思議に思いながらそのトリケラトプスを観察していると、


(あれ…人の姿が見える?)


近くにカウボーイハットを被った男の姿が見えた。どうやらトリケラトプスが男の後を付いていくようなのだ。


(怪しいな…今話題の密猟者かな?)


 タイムスリップが一般化されたのと同時に政府が警戒していたことがあり、古生物の密猟と過去への干渉がそれであった。こういった問題を解消するために、タイムスリップをする際には念入りな時空警察のチェックが入る。もちろん大奈も例外ではない。しかしそういった警察の包囲を抜けて密猟を犯すものが後を絶たない。


(訴えた方がいいかな…って!)


 大奈が振り返った時にはもう誰もいなかった。謎の男を見ているうちにおいていかれたらしい。早く追いつかなければ、そう思っていた矢先…


「ブモオオオオオオオ!」


 一頭の恐竜が大奈めがけて走ってきた。背中にたくさんの板を背負った恐竜、ステゴサウルスである。


「えっ!何で!?危ないんだけど!?うわあぁぁぁ!!」


 大奈は横に跳んで何とか直撃をかわした。その後ろから何かが追ってくるのが見える。大奈は近くの草むらに隠れた。現れたのは恐竜ではない。それはジープだった。上には銃を構えた男が2人乗っていた。そして、


 パァン!


 音がなったと同時にステゴサウルスは倒れた。ジープが止まって、そこから男達が下りてきた。


「おいおいもう仕留めちまったのかよ、生け捕りが目的の筈だぞ」

「安心しな、麻酔銃だ。こいつを一度基地にもって帰らねぇと…」


(うわぁ…こっちも密猟だよ)


 そう思いつつ草むらに隠れていたら、突然密猟者の一人が会話をやめ、こっちを見つめていた。


「どうしたんだよいきなり」

「さっきの姿をあそこにいるガキに見られた。訴えられたらどうなるかわかったもんじゃねぇ」

「なるほど、こっそり始末しようってか」


(バレた!?っていうかめっちゃ怖い会話してるんですけどー!)


 大奈の心の叫びも虚しく、密猟者達が近づいてくる。


(ああ…僕の人生もこれで終わりか。死ぬ前に恐竜が見れただけでもよかったかぁ…)


 半ば人生を諦めかけていたその時、


「グフッ!!」


 密猟者の一人が顔を凹ませて吹っ飛んで行った。突然現れたカウボーイハットの男が密猟者の顔を蹴り飛ばしたのだ。


「無事か、少年?」


 男は大奈の肩に手を乗せ、聞いてきた。


「え…はい、ありがとうございます…」

(この人…さっきの…)


「よそ見してんじゃねぇぞっ!この」

「なんだって?」


 もう一人の密猟者がライフル銃を構えたと思ったら、カウボーイハットは腰から爪のような形の短剣を取り出し、投げつけた。短剣は銃の筒に刺さり、ライフルは発射できなくなってしまった。


「んだと…げふっ」


 同じく蹴りで顔面を蹴りつけ、その密猟者をダウンさせ、両手を縛りあげた。


「よし、これであとは警察に引き渡すだけ…」

「はーっはっは、甘いな!」


 最初に倒した密猟者の男が突然笑い出した。


「何を…」

「今さっき仕留めたステゴサウルスに興奮剤が入った弾をぶち込んだ!起きたらお前らぺちゃんこだぜ!ざまあみろ、ガハハハグボァッ!!」


 カウボーイハットは密猟者を再度蹴飛ばし縛り上げる。そして目の前には、


「ブルルルルルル・・・」


「あわわわわ…目が覚めてる…」

 ステゴサウルスがこっちを見つめ、今にも襲いかかってきそうだ。

「こいつはちとまずいな…テリー!」


 カウボーイハットが声をあげた。そこには、


「バオォォォォン!!」

「あっ、さっきの!」


 そう、先ほどのトリケラトプスが立っていた。突進してくるステゴサウルスに対し、トリケラトプスは角を振り回して牽制しつつ、ときどき体当たりでステゴサウルスを突き飛ばした。しかしまだ暴れるステゴサウルスに、


「バオォォン!」


 ダダダダダン!!


「ち、ちょっと!あのトリケラトプス…!」

「驚いたか?ちょっと訳ありでな…」


 何とトリケラトプスの角が機関銃に変形し、ステゴサウルスを狙撃し始めた。


「ブオオオオオオオオ!」

「だ、大丈夫ですか!?あんなことしたら死んじゃうんじゃ…」

「なあに、こんなときのために殺傷力は弱めてあるよ、奴さんの調子はどうかな?」

「ブ…オオオオオオオオオオオ!!」

「ふう…体力は削ったけどまだまだ荒れてるな…そろそろいくか」

「えっ!?そんな近づいたら危ないですよ!!」


 カウボーイハットはいきなりステゴサウルスに向かってダッシュし始め、顔の手前で立ち止まった。

しかし案の定ステゴサウルスは棘の付いた尻尾を振り回し攻撃しようとする。しかし彼は紙一重で上手くかわし、語りかけた。


「…怖かったよな。大丈夫だ、もうお前を傷つけるものは誰もいない…心配するな、俺がついてる…」

「ブオオォォォォォ・・・・・・ブモォ」


 ステゴサウルスはようやくおとなしくなった。心なしか涙をながしているようにも見えた。




「へー、じゃあゾイックさんは密猟者などの取り締まりをしている方だったんですかー」

「まぁそういうことになるな」


 事件が一通り落ち着いて、大奈はゾイックと名乗ったカウボーイハットに事情を聴いていた。


「密猟者は捕まえましたけど、さっきのステゴサウルスはどうするんですか?」

「…実はあのステゴサウルス、DWダイノウエポンって組織から逃げ出したやつみたいでな、すでに改造されたあとだった。おそらく野生には戻れないだろう。」


 DWとは、捕まえた古生物に改造を加えてサイボーグ兵器とし、儲けようという悪徳組織のことである。現在最も時空警察を困らせている裏組織だ。先ほどの密猟者達もその組織に雇われたに過ぎないのだ。


「だが心配するな、そういう恐竜を保護するのも俺の仕事だ。テリーだって元々奴らに改造されたのを引き取ったんだぞ?代わりにその改造によって得た戦闘能力で奴ら時空犯罪者をぶちのめすってわけだ」

「そうだったんですか…よかったな、お前にはこんな立派な飼い主がいて」

 大奈はトリケラトプス、テリーの喉をなでて語りかけた。





「適当なこといってんじゃねーぞ馬鹿ゾイック。普段はパトロールさぼったり組織のボス取り逃がしたりでロクな功績あげてねーじゃねーか」

「おいおいテリーそりゃ言いすぎだろ?」

「あははは、ゾイックさんテリーになめられてますよ……」





「テリーがしゃべったあぁぁぁぁ!?」

「おいゾイック、話してなかっただろ」

「ああすまん、普段は会話しやすいように恐竜語を人間の言葉に吹き替えてくれる機械をこいつらの口元に内蔵してるんだ」

「そ、そうだったんですか…あー驚いた」

「そうだ大奈。せっかくだから元の時代に帰ったら一度俺の職場にこないか?恐竜好きなら楽しめると思うぞ、ただし他の人には内緒でな」


 そういってゾイックは大奈に連絡先と住所を書いたメモを渡した。この人は普段どういう仕事をしているんだろう?大奈は疑問に思いながら、元の時代に帰ったら一度訪れようと決めた。


続く

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