和製マッチ売りの少女のベースとなったログ
白い空間。
椅子が二脚。
「実は、はじめまして」
えんじ色の制服を着た少女が頭を下げる。
「私からするとはじめて会ったというわけではないのだけど……どうも。はじめまして」
こちらも頭を下げる。
「それにしても、制服なんだね。君の頃ってもう高校は辞めていたように思うけど」
「ああ、これは貴方のコンプレックスですよ。まだ治っていないんですね」
彼女の大きなリボンなリボンが揺れる。可愛らしい。
「年代のステージが変わったからごまかしごまかし過ごせるけれどね」
少女を見やる。
「確かに君の頃は大変だったな。制服の少女らを見るだけで動悸がしたものだ」
「羨ましいですか?私が制服を着ていること」
「フィクションだと分かっていてもね。あり得た未来なのかもしれないと思うと中々」
苦笑する他ない。
「随分な体たらくですものね」
「もう君には言われたくないけれどね。とっくに君も精神疾患患者でしょう」
「認めたくないんですよ。ご存じでしょう」
「さっさと病院に行っていればと思うよ」
少女は自分の体を見る。
「これから悪化させます。ごめんなさいね」
「何度も夢に見るよ」
「ええ」
得たものも実は多いのだが、やはりあれは不要な経験だったのだろうと思う。
「責めようと思って今日は来たのですが、困りましたね。貴女を責めるということは自分を責めるということになってしまいます」
「そうだね」
「それも良いのでしょうか?」
「自分で自分を傷つけるのは大変だよね」
代わりに助けてあげたかったが、どうもできそうにない。
「……やめておきましょう」
「ごめんねぇ」
「さて、そうすると我々が対峙している意味が無いようにも思えてきますが」
「まあ、タイミングが悪かったってことだよ。今日はご挨拶ということで」
「小説、お書きになるのでしょう?」
「そうしようと思っているけど。何を書いたら良いのやら」
「何か1つコンプレックスを定めてそれを消化してほしいです」
「……分かった」
「ふむ。これで意味が生まれましたかね」
「自分に厳しいよね」
「優しいんです。……では」
少女はくるりと回って消えた。
制服の残り香があるような気がした。




