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5章
雪の記憶
それから十年以上の月日が流れた。
花音は大人になり、デザインの仕事をしている。恋人もできたが、なぜか心の奥底には常に遥斗がいた。
あるホワイトデーの夜。仕事帰り、ふと空を見上げると、雪が降り始めていた。花音は立ち止まる。
「遥斗君…会いたい」
呟いた言葉は、雪に吸い込まれるように消えていく。
ポケットに手を入れると、ずっと持ち歩いていた小さなマシュマロの包み紙に触れた。あの日、遥斗が残してくれたもの。
花音は知っている。遥斗はもう、この世界にいないのかもしれない。それでも、彼との冬の思い出は、花音の心の中で永遠に輝き続ける。
雪は静かに降り続ける。花音は微笑んで、前を向いて歩き出した。




