4-22きっといい結果が訪れます
「ユウマね、入りなさい」
声をかけると「あぁ、合っていましたね」と安心した声が聞こえる。それからドアが開けられて、いつも通りの微笑みを浮かべたユウマが入ってきた。
「母上は初めてですね、薬師のユウマです」
「はじめまして、ご紹介にあずかりましたユウマと申します」
恭しく頭を下げるユウマ。それに対して「あぁ、ご丁寧にどうも」と母上は頭を下げた。
「ところで、くすし? ってなに?」
一通りのあいさつを終えた後、母上はそんな疑問を口にする。
「それについては追々……薬の扱いに長けた者と覚えておいてください」
今はそれだけわかっていればいい。説明しようとすると、私たちがした問答を、また繰り返すことになってしまう。
「それでユウマ、用意できたのね?」
「はい、こちらに」
ユウマが懐から白い包みを取り出した。手のひらに収まる程度の小さな包み。そんなに少ない量で済むのか。
「それは?」
包みに視線を送った母上がそう聞いた。ユウマが含みのある笑顔で答える。
「特別製の薬です、こちらを飲み物や食べ物に、飲み物がオススメですが……混ぜて服用すれば」
そこまで言って、ユウマが言葉を切った。どこで誰が聞いているかわからない。ここまでだけを聞けば、あくまで薬を処方されているだけにしか聞こえない。
「これを父上に飲ませてあげてください」
私は笑顔を浮かべてそう告げる。これは脅迫ではない。協力を求めているだけだ。断られれば別の手を考える。
「これを父上に飲んでいただければ、きっといい結果が訪れます」
父上はおそらく、私から渡された物を口にはしないだろう。使用人の誰かを使って食事に混ぜる事も考えたが、罪の重さや父上への恐怖心から白状してしまう可能性がある。その点では母上は最適だ。すでに覚悟を決めていたようだし、短剣を薬に取り換えるだけ。父上は母上に警戒心をまだ抱いていない。バカだと思って油断している。
「……すみません、短剣を使う事を止めておいて、結局母上を悪者にする提案をしてしまって」
この手段なら悪者と言っても、領民や使用人といった者から悪者と言われることはない。罪悪感に囚われなければ、実害はない。これくらいなら割り切らなければ。
「いいの、ヴィオラちゃんを守れるなら、お母さんは悪者にでも、なんにでもなるわ」
「……ありがとうございます、母上」
何だか変な感じだった。前にもこんな感じの熱を感じたことがある。二度目の人生になってからだ。こんな事を感じるのは。




