4-18面倒な事になる
フレイアが呟く。一度息を吐いて、それから言葉を続けた。
「……大丈夫だ、殴って解決できないってのは理解はしてる、下級だけどこれでも貴族だ、そういう闇をいくつか経験だってしてる、納得はできてねぇけど」
「そう」
彼女の快活な姿から想像できないが、おそらくいろいろあったのだろう。正義感だけではどうにもならないのは理解しているらしい。時には汚れなければいけない事もある事を、納得はしていないが理解はしているという事だ。
「アリード、あの豚を、サベルアルト・グリムを掃除するわよ」
「ですが」
アリードが珍しく反論する。やはり今回に限っては、正式に対峙して打ち勝つべきと考えているのか。
「野盗を装ったり、毒殺したりでは結局ヴィオラ様が指示したと想像が及んでしまいます、であるなら正式に開戦事由、今回は自衛のためと告示し、挙兵した方が幾分か印象は良いかと」
「アタイも、それの方が」
フレイアはアリードに同意するが、実際は深いところまで理解していないだろう。その方法では面倒な事になる。
「アリードは理解しているでしょう? その方法では私の望みはかなえられない、というよりおそらく現状は変わらないわ、暗殺は回避できるけど」
「……そう、ですが」
「ど、どういう事だ?」
やはり理解できていないらしいフレイア。少し面倒だが、説明してやろう。
「……原則として領主は国王によって選任任命されるのよ、だからあの豚に勝ったところで、私が領主になれるわけではない、若すぎるのもあるし、何より国王はあまり私をよく思っていないから、これ幸いと自分の都合の良い駒をここに送り込んでくるでしょうね」
そこまで言って私は言葉を切る。送り込まれてきたその駒と私が結婚することになり、グリム領に婿領主が誕生する。私が拒否すれば母上と結婚すればいい。どちらも拒否するのはありえない。そうなれば国王が一時的にグリム領を治める事になるからだ。その後の展開は容易に想像できる。
駒を受け入れれば、おそらくは現状は変わらず、悪政は続く。国王派の者だ。そうなるのが当然。くわえて言えば、やってきた駒は国王から私を暗殺するように密命を受ける可能性もある。それで私が返り討ちで暗殺すれば、また駒がやってくる。それを繰り返せば、私が不利になっていくのだ。不審な死が続けば、私に疑いをかけられるのだから。
それに私にはトーマスという愛しの子犬君がいるのだ。気持ち悪いおっさんと結婚したくないし、気持ち悪いおっさんが父親になるのもごめんこうむる。




