4-17経験しなくて済むなら
「なんでしょう」
手を打ってある、という事実に少しは気が晴れたのか、トーマスとルーは表情が少しだけ明るくなる。ただこの件に二人を関わらせる気はない。いつも通りだ。
「あなたたち二人は、母上にこの事をそれとなく伝えてきて、巻き込まれる可能性もあるから、自衛できるようにね……そのあとは二人とも使用人長の補佐にでもついていて」
その提案の意味をすぐに理解したらしい二人は、表情がまた暗くなる。
「しかし、ヴィオラ様の命が危ないのに、離れるわけには」
「そうです、ヴィー様、守るべき主から守ってもらう訳には」
トーマスが顔を横に振りながら訴えてくる。ルーもそれを援護するように声をあげた。可哀想だけど、あなた達に汚れてほしくないのよ。
「……トーマス、あなたにはまだ人間を斬る経験をしてほしくないのよ……ルーはシンプルに邪魔」
トーマスは頭が良い。今は私の身を案じすぎていて気付いていなかったらしいが、すぐに気づいたようだ。暗殺するのであれば人間の刺客がやってくる。私を守るという事は、その人間を斬らなければいけない。
「トーマス、騎士になるなら人間を斬らなきゃならない時がいつかくる、だけどな、大人になるまでその経験をしなくて済むならそっちのほうが良い……お嬢の心遣いを無駄にすんな?」
フレイアの言葉を聞いて、トーマスは胸の辺りをぎゅっと握りしめる。理解はできるが納得はできない。そんな風に見えた。
「うぅ、トーマス、行きましょう」
地味にショックを受けているらしいルーが、泣きそうになりながら声をかける。それに対してトーマスは声を出さずに頷いた。
「お願いね」
二人の寂しそうな背中を見送る。今からでもトーマスを後ろから抱きしめたい。撫でまわしたい。だが今は抑えなければ。
「ふぅー、子ども扱いは可哀想だけど、あの子たちの為」
「お嬢も子供だぞ、子供らしくいたって……」
フレイアがそこまで言って、息をのんだ。私が彼女の顔を見たからだろう。きっと陰のかかった顔をしている。謀殺を繰り返してきた時の顔になっているのだろう。
「あなたも、これからする話を承服できなければ離れていなさい、邪魔だけしないでくれればそれでいいわ」
これはフレイアをそばに置いていいかのテストと言える。トーマス達の様に遠ざけなかったのは、こういう話にどういう反応を示すか見たかったのだ。場合によっては消さなければいけないだろう。実力的には骨が折れそうだが。願わくばその面倒が起こらないでほしい。
「……アタイは」




