4-15夜のお稽古
本当にうれしそうにトーマスが呟いた。抱きしめたい。撫でまわしたい。そんな衝動を抑えながら、フレイアに問いかける。
「……それでトーマスの得意武器って何なの?」
正直そちらも気になる。どんなカッコイイ武器を使って戦うのか。トーマスの将来の姿をオカズにする時に役立つ情報だ。
「やってみねぇとわからないぞ、でも素直で真っ直ぐだし、ランスが向いてるとアタイは感じた」
「ランス、ですか」
トーマスの表情が明るくなる。剣よりもしっくり来ているのかもしれない。確かに剣よりも向いている気はする。いろいろテクニックはあるだろうが、基本はまっすぐ素直に突きを繰り出すだけだ。
「いいわね、じゃあ私が稽古に付き合ってあげるわ」
夜のランスのお稽古を。はぁはぁ。一杯突いて。はぁはぁ。そんな内容の言葉が喉まで出かかった瞬間に、フレイアが「ん?」と何かに反応する。視線を向けた先に私も目を向けると、アリードとルーがこちらに走ってきているところだった。血相を変えているように見える。何かがあったと容易に想像できてしまった。せっかくトーマスと夜のランスのお稽古チャンスが。
「ヴィオラ様、少しまずい状況に」
私たちの前にたどり着いたアリードが、そう告げる。
「はぁはぁ……やっぱり何かあったのですね?」
遅れてたどり着いたルーが、息を切らしながらそう問いかけた。場所の心当たりだけ聞かれて、何も聞かされなかったのだろう。アリードの焦った姿は珍しい。何事かと心配になって、ついてきたといった所か。
「何? あなたがそんなに慌てるなんて、相当の事かしら?」
何が起こったのか。アリードが焦るという事は、相当の事か。もしかして革命が、領民が立ち上がり大挙して押し寄せているのだろうか。あばばば。
「お父上が、サベルアルト様が……」
アリードはそこまで口にして、顔を歪ませた。とりあえず革命ではなさそうだが。
「申し訳ありません、このような事をヴィオラ様にお伝えしなければいけないとは」
言いにくい事なのか、言葉を詰まらせるアリード。父上がどうしたのか。じれったくなり続きを求める。
「いいわ、アリード、それより何?」
「サベルアルト様が……ヴィオラ様の暗殺を企てております」
「は?! お嬢の親父だろ?! 何かの間違いじゃ」
フレイアの声が響いた。他の面々も、アリードの言葉に動揺を隠せないという感じだった。それにしても。
「なんだ、そんな事? もったいぶって、ビックリするじゃないw」




