4-13得意な武器
「ハンマーだよ」
出し抜いたと言わんばかりに、フレイアが嬉しそうに言った。それっぽい得物だが、剣しか持っていない。
「ハンマーなんて携帯性が皆無なもん、持ち歩けねぇし、しかもハンマーを使う時は本気で戦う時だけだ、滅多に使わねぇんだよな」
使わない物をずっと持っているのは、確かに非効率だ。
「それでこの剣の出番って訳だ」
フレイアがニカッと笑い、掲げていた剣を軽く振る。
「この剣は魔力伝導率がめちゃくちゃ高い特別製でな、魔力を手のひらに集中させて握るだけで、剣に魔力が勝手に伝わっていく」
魔力が剣から沸き立つのが見える。疑似的とはいえ内魔力を放出している事になる。
「なるほど、工夫ね」
私が声をあげると、フレイアが「お嬢は気づいたか」と笑う。
「なんです?」
トーマスはわかっていない様子だった。まぁ仕方がないだろう。魔力の使い方の工夫である。それはもちろん鍛錬の末にたどり着く物で、まだまだ初心者で駆け出しのトーマスにはわかるはずもなかった。
「内魔力というのは、体外に放出するのは難しい、まぁ出来ないわけではないけどな……だから体の中で魔力を扱うもんだ、でもこの剣はどうなってる?」
「あぁ、放出されています」
はっきり分かった訳ではなさそうだが、トーマスは頷いている。
トーマスはまだ実感していないだろうが、内魔力使いが魔力を体外に放出しようとすると、数倍の魔力を消費する羽目になる。それでいて大した量を放出できないのだから、あまり役に立たない。
しかし、無駄の出ないこの方法なら、充分実戦でも使える。
「それから、属性魔法を使う……慣れはいるが魔力のコントロールは大して変わらねぇ」
そう言いながらフレイアは魔力が沸き立つ剣を、地面に突き刺し声をあげた。
「力を貸しな! 土の精霊!」
その言葉に呼応し、突き立てた剣に土や石が集まっていく。そうしてわずかな時間で、土と石でできたハンマーが出来上がった。体より一回りほど大きいそれを、フレイアは軽く振って掲げた。
「これで、ハンマーの出来上がりだ」
何という無茶苦茶な詠唱だ。確かに詠唱にルールはないし、決まった言葉もない。ただ精霊との対話であり、魔力の属性変換をしてもらうための合図の様な物だ。だから何でもありと言えばそうなのだが。
「勝手な印象だけど、火の使い手ではないのね」
てっきり名前や性格からして、火の使い手のイメージがあったが。
「火の方が相性がいいけどな、重量が無いとハンマーの意味ないだろ」
確かに火には重量がない。形だけのハンマーになってしまうか。
「それに、火だと周りに無いから、直接変換しないといけないだろ? 面倒くせぇ」




