4-12向いてない
「うーん、これぐらいか、トーマス、終わりだ」
フレイアの宣言に、トーマスが悔しそうな表情を浮かべる。攻撃を当てられなかったのが、悔しかったらしい。
「あぁその、なんだ……何度かトーマスの剣の扱いを見たわけだけど、剣は向いてないと思うぞ、素直過ぎて分かりやすい」
珍しく言いにくそうなフレイア。何でもズバズバと言ってしまいそうなのに。そこまでトーマスは剣に向いていないのか。
「そ、そんな、私にはヴィオラ様から頂いた大事な剣が! あの剣を、あの剣でどうしても戦いたいんです!」
トーマスがすごい勢いで、まくしたてる。フレイアがその勢いに押されて、後退った。
「わかってるけどな」
困っているフレイアが、チラリとこちらを見た。まぁ私が渡した剣が原因なんだが、私を見られても困るというか。しかし、あの剣は間に合わせで作った物だ。いつ折れてしまうともわからない物に、命をかけられても困る。
「トーマス、あんな剣、大事にしなくていいのよ? 他の買ってあげるから」
「そうはいきませんよ! ヴィオラ様から初めてもらった剣で、しかもあの剣に私は誓いを立てたのです!」
今にも泣きそうな顔を浮かべたトーマスが、そんな事をまくしたてる。それから、走り出し少し離れた所に置いてある剣に向かった。よく見ると剣の下に上等そうな敷物がひかれていて、見るからに大事にしているのがわかる。
トーマスは剣の置いてある場所に到達すると、膝が汚れるのも構わないという感じで滑り込んだ。
「私は、私は!」
剣を拾い上げ、抱きしめながら涙目になっているトーマス。それからフレイアを見上げた。
「……まぁわからんでもないが」
困ったという感じでフレイアが呟く。さすがに私も困る。まさかここまで、あの剣を大事にしているとは。安易に渡すべきではなかったか。だがキャラが変わるほど大事にするとは、思わないではないか。
「うーん、これはアタイの奥の手だけど……」
変な空気が流れ始めていたタイミングでフレイアが呟いた後、決心したように続ける。
「よしっ、トーマスは弟子だしな、とっておきを教えてやるか」
「とっておきの剣での戦い方ですか?」
剣で戦う事を、トーマスは譲る気がない言葉。
「まぁ、ある意味、そうだな」
その言葉で、トーマスの表情が明るくなる。
フレイアは自らの腰に携えていた剣を抜くと、空に掲げる様にして口を開いた。
「アタイの得意武器は何だと思う?」
問われたトーマスは「剣では?」と答えた。剣としか思えないふるまいだが、違うのだろうか。




