4-10一番悪い奴をぶん殴ればいい
「終わったかい? もう行っていい?」
フレイアの声。そちらを向くと、フレイアは面倒くさそうに机に頬杖をついていた。いつの間にか腰かけている。あいさつの後に難しい話になって、退屈してしまったのか。
「……あなたねぇ」
大人でしかも騎士団の長を務めた事さえある人間が、それでいいのか。
「なんだい? じゃあアタイも意見を言ってやろうか」
イタズラっぽくフレイアが笑う。
「……聞くわ、なに?」
「一番悪い奴をぶん殴ればいいじゃん」
「もう行っていいわよ」
何という安直な意見。それで解決できれば確かに楽ではあるが。しかも冗談とかではなく、多分本当にそう考えているのだろう。
「あいよ」
わかっていたという様な表情をした後、フレイアは立ち上がる。
「トーマス、訓練行くぞ」
遊びを誘うような調子でそう口にして、フレイアは部屋の外に出て行った。それを見てトーマスがオロオロしながら私を見る。
「大丈夫よ、フレイアについていきなさい」
そう声をかけると、トーマスは一度頭を下げてからフレイアの後を追って部屋を出て行った。
少し呆れたという様な空気が、その場に残った者の間に漂う。これ以上の話は特にないという判断なのか、アリードが「では私も戻ります」と、部屋を出て行った。
「ユウマ、あなたは支度をしなさい、身の回りの整理とかもあるでしょう」
訪問をしてきた所に、そのまま勧誘をしてユウマは頷いた。そうなるとさすがに、明日から働くというのは難しいだろう。今は何をしているのか知らないが。
「ありがとうございます、可能な限り早く支度を済ませましょう……特別製の薬の方も急ぎご用意いたします」
どんな効能にするかは、すでに決めてあった。それを先ほど伝え、可能であるという事も聞いている。後は用意が出来れば、決行するのみ。やっと、来るべき時がきた。
「薬? ヴィー様どこか悪いのですか?」
薬という単語に反応したルーが、心配の表情を浮かべる。薬を頼んでいれば、そう思ってしまうのも無理はないか。
「体は悪くないわ、それは私を世話しているルーならわかるでしょう?」
「そう、ですね」
薬の内容が気になってしょうがない、という顔だった。だがさすがにこの子にはトーマス同様話す気はない。
「お子様には刺激が強い話よ、忘れなさい」
本当に子供には刺激の強い話。人の生き死にを、人の尊厳を奪う話だから。
「ま、まさか」
なぜかわからないがルーはそう呟いた後、なぜか顔を赤くして声をあげた。




