4-6私に仕えない?
自分が捕縛されるかもしれない、という心配はしていない様だ。薬の使用方法までは聞いていないのだろうか。ただ、薬の効能からおおよその使い方は限られる。詳細は聞いていないから分からないが、最終的にビーファローは絶命しているのだ。薬というより毒である。そんな物、悪事以外に使う方が難しいとさえ思う。
「ヘンリーは処刑したわ、不正の疑いで」
「あぁ、バレてしまいましたか」
「あなたが渡した薬を使用した件が、直接の処刑理由ではないわよ」
「おっと、ふふふ」
イタズラがバレてしまった、という様な顔をするユウマ。おそらく薬の使い方は聞いていたか、見当はついていたのだろう。それでも渡したという事だ。おおよそ真っ当な人間ではない。
「そうなると、困ってしまいますね、ヘンリー様はどのような理由で私を呼びつけたのでしょう」
「全く何も聞いていないの?」
「本当にわかりません」
ユウマは微笑みを絶やすことなく、肩をすくめる。本当に呼び出されたのか、怪しいものである。こいつは私やアリードと同じ人間。もしかしたらヘンリーが処刑されたのを、どこかから察知してやってきたのかもしれない。新たな雇い主を求めて。もちろん私の人となりを調べたうえで。
「そういえば、少し前にアリード様にお譲りした薬は、望む効果は得られましたか?」
予想外の名前が飛び出して、少し驚いてしまう。
「……アリードと知り合いなの?」
「いえ、直接は存じ上げません、その時は懇意にしている商人から相談を受けた形なので」
やはりユウマは微笑みを崩さなかった。アリードが手に入れた薬は、スラム街で愚物どもを片付けた時の毒の事だろう。私があの毒をどの様に使ったか、理解している。本来なら消し飛ばすところだが。
「えぇ、望む結果になったわ……それで相談なのだけど、私に仕えてみないかしら? 薬師としてはもちろん、特別製の薬を扱う者として」
「ユウマと申します、薬師です、ヴィオラ様にお仕えさせていただくことになりました、よろしくお願いします」
ユウマが頭を下げる。相手は私を含めトーマスとルー、アリード、フレイア。私の自室にみんなを集めて、顔合わせをしたのだ。
「ユウマ様は」
トーマスがそう切り出すと、ユウマが右手をあげて言葉を遮る。
「様はやめてください、私は貴族でもありません、それどころかこの国出身ではないので、平民よりも立場は下ですよ」
卑屈という訳ではない。ただ決まり文句の様に、あらかじめ決めてあった言葉をただ発しただけという感じだ。これがユウマの処世術なのかもしれない。自分を下げて、相対的に相手を持ち上げている。




