1-8スラム街での出会い
我が領主館がある街にも、スラム街というべき一角がある。そこには最底辺の領民が集まっているのだ。もちろんここに、仕事は存在しない。この一角から出れば、他の領民から睨まれ疎まれその行動は監視される。そのせいで仕事にありつけないという訳だ。結局貴族たちが平民にやっている事と変わりない。これで平民たちは不満を漏らすのだから、自分勝手で愚者、いや、愚物どもだ。
「それにしても、汚い……臭い……ひどい所ね」
スラム街を進んでいくと、それがどんどんひどくなっていく。見た目はしょうがないが、臭いは耐えがたい。魔法で自分の周りに膜を張って臭いを止め、膜の中の空気を浄化して、綺麗な空気にする。これでなんとか。
それにしても衛生状態がひどい。スラム街の人間は、ほとんどここで軟禁状態だ。新しい服を買いに出ることも、清掃してごみをここ以外の場所に捨てることも難しい。本当にここで生活が成り立つのか。
建物の陰に目を向けてみる。ここの住人がその視線に気づいて、すぐに隠れてしまう。一瞬だが見える姿は、骨と皮だけの、スケルトンと見間違えてしまいそうな姿。
「でも、これだけ追い詰められていれば」
支援でもしてやれば、簡単に味方になってくれるのではないか。単純に数をそろえるためならば、スラム街の人間は有用だ。それに栄養状態や衛生状態がまともになり、普通の領民に出来ればその分税収が増える。ここの人間は働いていないのだから、税も納めていないのだ。
「くくっ、今やってることが終わったら、スラムに手を入れるべきかもしれないわ」
味方と税収が増える。実現すれば私の実績。公約の信頼度の一助にもなる。いい案を考えておかなければいけないわね。
だが、今日はいい人材を見つける事が目的。歳が同じくらいで、イケメン。魔力がそれなりの男の子。私の強運をもってすれば、すぐ見つけられるはずだ。
「……あの、こんなところに居たら危ない、です」
後ろから声をかけられた。振り向くと同じ歳くらいの男の子。可愛らしい顔つき。それにスラムの人間にしてはガリガリでは無い。痩せてはいるが体つきが年相応だ。魔力を持っていると、普通より生命力が溢れる。命の危機によって、魔力が生命力に置き換わるのだ。体つきはそのおかげで、これで済んでいるのだろう。
「言ってるそばから、幸運だわ……さすが私、ふふっ」
おそらく魔法学校に入れるくらいの魔力はある。顔もかわいい系だけど、イケメンね。合格だわ。




