4-3悪役は私の役目
「とりあえず、トーマスの師匠になってもらっているわ、外部の家庭教師みたいな立ち位置ね」
フレイアは内魔力の使い手だ。しかもかなりの使い手。トーマスの師匠としては最高なのである。魔法学校に入学するまでの一年間、みっちり鍛えてもらうつもりだ。
「安心して、騎士団に戻すなんてしないから……あなたの地位は脅かされないわ、ジャック団長w」
団長という単語を強調して、嫌味度合いを高める。
「ちょっ、ヴィオラ様……」
咎めるような声をあげるトーマス。トーマスはやはり優しい。そして、フレイアもきっとジャックを責めない。呵々と笑って受け流してしまうだろう。
「ジャック団長、あなたはその責務を全うしなさい、人から掠め取ったのだからね……やめるなんて許さないわよ」
「おやめください、ヴィオラ様、ジャック団長だって」
「いいんだ……トーマス、いいんだ」
ジャックはトーマスの言葉を止める。結局このおっさんは罰せられることを望んでいる。そして悪役はいつだって私の役目なのだ。
「それで? 用事はそれだけ? なら行くわよ」
「いや……話を脱線させてすまない」
低くて少し震える様な声。ジャックは一度息を大きく吸い込むと、ゆっくりと吐き出した。
面倒な性格だ。ダメという言葉で、ふと悔しさが湧いてきてしまったのだろう。フレイアが牢から解放されたことで、うやむやにしていた気持ちがはっきりとした形になって現れたのだ。
「本当はアリードに相談しようと思ったんだが、捕まらなくてな」
いつも通りとはいかない硬い口調。それでも何でもない風に装っている。ジャックがそうあろうとするなら、私もそう応じるだけだ。
「……そう、トーマスとの戯れをおっさんで汚染したぐらいなのだから、価値のある話でなければ許さないわよ」
「……ヘンリーを訪ねてきた男がいるんだ、重要性があるかどうかというより、ヘンリー関係の話をさすがに領主様にはお伺いしづらくてな」
ヘンリーは少し前に処刑した。もちろんその事を、わざわざ広く知らせるようなことをしていない。だから知らずに訪ねてきてしまったという事は充分ありえるのだが、ただ、不正をしていた人間を訪ねてくるというのは、すこし引っかかるものがある。
「あと、俺もかすかにしか覚えていないんだが、その男は昔にビッグアースワームの変異体に襲われた不運な男に似ている気がする、ヴィオル村になる前のあの場所の」
「あっ、うろうろしていたっていう」
トーマスが思い出したように呟いて、こちらを見る。ヴィオル村を作る過程で討伐した害獣。その変異体が害獣に認定される要因になった男だ。なぜかそんな所をうろついていた謎の男。




