4-1色ボケ娘
「ふぅ」
私は館の廊下を歩きながら、ため息が出てしまう。少し疲れた。夕食の時間までまだある。部屋でダラダラとしよう。
「お疲れ様です……申し訳ありません、私はついて回るしかできず」
トーマスがそんな声を出した。顔を見ると申し訳ないという表情。
現在、元スラム街の市場化に伴う清掃が終わりつつあった。そのおかげでいろいろ忙しくなっているのだ。
まだ飲食系の露店は無理だが、その他の露店は出始めている。しかし、やはり貴族への恐れによって出店が遅れていた。そのせいで私が平民に手出しさせない様に貴族へ圧力を、もとい脅迫に行っている状況だ。
だが私はまだ領主ではない。そのせいもあって難航している。やはりそろそろ領主の権力を手に入れたい。そして楽がしたい。
加えて再調査の件もある。こちらは領主の権力では楽にならないが。
「いいのよ、トーマスは居てくれるだけで、あぁっ」
「ヴィオラ様!」
躓いたように見せかけて倒れ込み、それをトーマスが受け止めてくれる。素早くトーマスの腕の中で匂いと胸筋を堪能した。くんかくんか。はぁはぁ。もみもみ。
こうやってトーマスのいろいろ吸収しているから、居てくれるだけでいいのよ。
「ごちそ……ありがとう、トーマス」
怪しまれない程度に堪能して、体勢を立て直す。幸せである。
「いえ、お気を付けください」
何の疑いも持っていない笑顔を浮かべるトーマス。何という純粋無垢な子犬。いや、最近は子犬という体格ではなくなってきてしまったが、それでも性格は変わらず子犬君だ。
「あ、ジャック団長」
トーマスがポツリとつぶやく。その視線は廊下の先に向けられていた。
「お嬢様、やっと見つけた」
むさ苦しいおっさん声が、背後から聞こえてくる。せっかくの幸せな気分を害された。早くトーマスの美声で上書きしなければ。おっさんに汚染されてしまう。
「トーマス? ちょっと私の名前を呼んでくれるかしら?」
「え? でも……」
「いいから、私を見て」
私の背後に向けられていたトーマスの顔を、両手で包むようにしてこちらに向ける。
「あ……ヴィオラ様」
だいぶ顔が近くなってしまった。吐息が絡み合う距離。トーマスは顔を赤らめていた。あっキュン。加えてしびれそうな美声。最近声変りをして、大人の色気を出しよる。けしからん。お仕置きが必要じゃな。はぁはぁ。
「ど、どうしたんです、ヴィオラ様」
あっキュン。どうすればいいかという焦った表情。くぁわいい。ベッドに押し倒したら、そういう顔をもっと見れるのかしら。はぁはぁ。
「おい、無視するな、色ボケ娘」
「……エクスプロージョン」




