3-22報告
館に戻り、さっそく父上の執務室に向かう。もう夕方に差し掛かっている時間。もう仕事をしている時間ではない。というか、普段から仕事は下の者に任せっきりで、執務室はほとんど使われていない。しかし今日は違う。皮肉にも先ほど始末した者の一人と、執務室で内緒話をする予定になっている。
執務室のドアをノックした。すぐさま父上の声が返ってくる。
「遅いぞ! 何をしていた?!」
待ちくたびれて怒っている声だ。
「父上、私です……よろしいでしょうか?」
中から「ぬ……ヴィオラ」と、身構える様な声が聞こえてきた。先ほどの怒る声が嘘の様だ。
「なんだ」
硬く拒絶するような声。中に入れずに済ませたいという感じだ。顔を合わせるのが、相当嫌らしい。そういえば最近夕食を一緒に取っていない。昔は毎日ではないが、頻繁に夕食を共にしていた。あの時の猫なで声が懐かしく感じるわ。
「報告があります、大事な報告です」
少しの沈黙。それから「入れ」と返してくる。私は「失礼します」と断ると、ドアを開けて中に入る。
中には豪華な事務机に着席する父上が、正面に見える。表情は硬く、身構えているようにも見える。そんなに警戒しないでwまだ、大丈夫ですよw
「報告とは、なんだ?」
「はい」
一応、神妙な態度をとっておこう。というか、意識していないと笑ってしまいそうになる。
「実は……父上を貶めて討ち取ろうとした輩を、処刑いたしました」
「は?! 処刑……だと?」
父上は椅子から跳ね上がる様に立ち上がり、声をあげる。何を思ったのか、誰を思い浮かべたのか。おそらく害をなそうとする者の心当たりは、沢山あるだろう。さすがに私の意図をこの時点で察するだけの能力は、この豚にはない。
父上は少し安心したような表情を浮かべる。自分の身が知らない間に危機に瀕していたという事を知って、それが取り除かれたという事にそんな表情を浮かべたのかもしれない。
この手紙を見て、どんな顔を浮かべるのだろうかw
「これが、その者たちが偽造した密告の文書です」
外出着のポケットから四通の文書を取り出して掲げる。
「これをオレリアン・イソップに届けてほしいと頼まれました、そして私が父上の代わりに領主に立つべきだと」
四通の文書を父に手渡すと、受け取った手紙をすごい勢いで読み始める。読んでいるうちに表情が青くなっていくのがわかった。
「……読んだのか? この文書を」
「えぇ、もちろんw」
父上がコチラに吊り上がった眼を向ける。もしも父上が善良な領主で、私と健全な信頼関係を築けていたら、この場面でこんな眼を向けてきたりしない。救われたとお礼と共に褒めてくれていただろう。
「あれぇ、褒めていただけないのですかぁ? 父上ぇw」




