3-20死人に口なしって言うでしょ?
つい笑ってしまいそうになった。それを隠す様に四通の文書に視線を送る。中を改めると、確かに父上、サベルアルト・グリムが不正を指示した事を告発する内容。面白いのは揃って自分は潔白で主導した人物が別にいる、とその人物の名前をあげている事だ。
「いいわね……アリード、来て」
声をあげると、ドアからアリードが入ってくる。予定にない人物の登場でヘンリーたちの表情が、微妙なものに変わった。どう反応していいかわからない、という感じである。
「文書の中であげられている人物、使えるんじゃないかしら?」
集めた文書を一度アリードに手渡した。受け取った文書に目を通すと、文書を返してくる。
「罪を擦り付けられている人物ですか、お人好しもしくは正義感などで邪魔だからこういう扱いをされているのでしょうな……後ほど精査いたしましょう」
「……先ほどから何の話をしておいでで」
たまらなくなったという感じで、ヘンリーが問いかけてくる。表情は険しい。何かがおかしいと考えているらしかった。
「気にしないで、こちらの話よ」
もう少し確認したいことがある。ご機嫌を取るために、笑顔を浮かべておく。トーマスとルーの為に、確認しておかなければいけない事だ。
「ところでヘンリー副団長? 確認したいことがあるのよ」
「……なんでしょうか」
声も表情も硬い。まぁ今さら警戒しても遅いのだが。
「フレイアはわかるかしら?」
「え、えぇ……元上司ですので、密猟の罪で投獄されていますね、それが?」
「ビーファローが暴走したのはあなたが薬か何かを飲ませた、という事でいいかしら?」
「……は?」
「そして、タイミングを見計らってフレイアをそのビーファローのいる所に誘導した、子供は偶然かそう仕向けたのか分からいないけど」
構わず話を進めていくと、ヘンリーが慌てたように声をあげる。
「ちょっ、ちょっと待ってください、何を」
「そういうのいいわ……大体当たっているでしょう……ビーファローは薬の影響で最終的に絶命した、偽装工作の為に死体に剣で傷をつけた……こんなところでどう?」
「いや、だからなにを……フレイアの件は確かに……その僕がちょっと噛んでいますが、それをなぜ今」
やはり、ヘンリーがフレイアをハメたようだ。フレイアの方が下級の貴族なのに、自分の上にいるのが我慢ならなかった。
そして今回の文書に関しても、罪を擦り付けているのがジャック団長だ。調べた所、あのおっさんもヘンリーより下級の貴族らしい。
「何かおかしいですぞ」
ヘンリーと私のやりとりを見ていたモブのおっさんたちが、そんな事を口にしながら取り乱し始めた。
「ヘンリー副団長、詳細は面倒だから語らなくていいわよ、死人に口なしっていうでしょ? こちらでうまく、話の辻褄を合わせておくから、心配しないで……くははっ!」




