3-18提案
「はい、サベルアルト様の意に反する者の罪を偽装して、館の地下牢に投獄しております」
得意げにヘンリーは口にする。すんなり話してくれたが、そんなにすぐ私を信用したのかしら。
「すんなり話した事を疑問に思っている、という感じですね」
「えぇ、正直驚いているわ……もう少し時間がかかると思っていたから」
「もちろん騙されている可能性は疑っていますよ、サベルアルト様と心中なんてまっぴらごめんです、しかし実際の所証拠がないのでね、お嬢様が僕もろともお父上を葬るのは無理だ」
また得意げな声。それに加えて両手を大げさに広げている。自分が圧倒的に優秀と信じて疑っていない、という感じだ。少し鼻につくな。それより。
「やっぱり証拠はないのね、当たり前か」
父上もバカではない。文書で罪の偽装を指示している訳がない。ヘンリーの方も、証拠になるような文書を残さないだろう。あるのは改ざんされた罪状書のみという所か。
「えぇ、なので失脚させるのに、この件は使えませんよ?」
さてどうするんだ。そんな風にヘンリーは試しているかのような口調だった。あくまで自分が上だと信じて疑っていない態度。雑魚はこれだから。
「いいわ、もともと別の方法を使うつもりだったのよ」
「おや、どのような手をお考えで?」
「……あなたには内部告発をする手紙を書いてほしいの」
ヘンリーは「内部告発?」と、驚いた様子で聞き返してくる。あら、思いつかなかったのかしらw 大変優秀なヘンリー副団長ともあろうお方がw と喉まで出かかったが抑え込んで言葉を続ける。
「他の者にも話を持ち掛けているのだけど、あなたの場合、サベルアルト・グリムが自分の意に沿わない者の罪を偽装し投獄している、と訴え出てほしいの……勇気を出してね」
「ははっ、勇気を出して、ですか」
演劇役者なのかという大げさな動きで笑うヘンリー。それから続けて問いかけてくる。
「ですが、誰に訴えるのですか? 他の領主も王も、結局同じことをしていますよ」
権力を持つという事はそういう事だ。その誘惑に抗えるものは少ない。だが、いないわけではない。
「私の遠縁にいるわ……高潔な正義感溢れる領主、オレリアン・イソップが」
私の因縁の相手であるオースティ・イソップの父親だ。
「オレリアンに内部告発の文書を複数の人物が送る、そうすれば確実に父上の粛清に動くでしょうね、父上をよく思っていないし、縁者として暴挙を止めるという口実を掲げる事ができる」




