3-17密会
数日後、シズクにヘンリーの後を追わせた。チャンスはすぐやってくる。ヘンリーは独り身で、帰宅する時はいつも一人で酒場で夕食と晩酌をして帰る。夜一人になるタイミングがあるという事だ。
「こんばんは……少し話をしませんか? ヘンリー副団長」
ヘンリーがいつも通り酒場から出てきた所で、路地の陰から声をかける。
「誰だ」
唸るような低い声。ヘンリーは警戒していた。腰に携えた剣に軽く手をかけている。私は暗がりから月明かりの元に一歩踏み出す。それから被っていたマントのフードを外す。
「?! なぜ、ヴィオラ様が」
ヘンリーが片膝をついて礼をしようとしたが、寸前の所でやめる。こんなところでそんな行動をとれば、万が一誰かに見られていたら印象に残ってしまう。おそらくヘンリーはそう考えたのだろう。なるほど、頭が回る様だ。
「要件次第で、僕の行動を決めたほうが良いようですね」
ニヤリと笑ってそう口にするヘンリー。
「よく分かっているわね」
少し芝居かかった動作で、私は暗がりの方へ入る様に促す。
「それで、ご用件は……お嬢様が一人で夜の街においでになるくらいですから、相当の、聞かれてはマズイ要件でしょうか」
暗がりに入った事で、ヘンリーの顔が見えずらい。それでも声の調子からして、ニヤついているという事はわかる。
「えぇ、単刀直入に話すわ……父上が、サベルアルト・グリムが邪魔なのよ、排除するから手伝いをお願いできるかしら?」
私の言葉に、ヘンリーは黙る。ややあって小刻みに震えているように見えた。笑いをこらえているような、そんな風に見えるシルエット。
「いやぁ失礼、そろそろ来る頃かと思っていましたよ」
まだ笑いが残っている風に返してきた。
「あら、どうしてどう思うの?」
「ここ数年のあなたは、お父上に背く行動ばかり、誰だって領主の座を狙っているとわかりますよ」
派手に動くつもりはなかったが、やはりやっている事から秘密裏に遂行するのは無理な話だった。父上には筒抜けになっている。いろいろウザ絡みされているが、興味が無いからなんて言っていたか覚えていないのだが。
「話が早くて助かるわ……手伝ってくれたら、もちろんあなたには良い思いをさせてあげる」
「……話を聞きましょうか」
明らかにヘンリーの声は上ずっていた。めぐってきたチャンスに高揚しているらしい。
「じゃあ、まずは確認だけど、あなたは父上の指示で無実の人の罪の偽装をしているのかしら?」




