3-15ば、馬鹿なの?
「突然襲ってきて、少し痛めつけてやれば落ち着いて引き下がるだろうと思ったんだ、でも一向に引いてくれなくてな、こっちは女の子を庇いながらだし、しまいにゃあアイツ村の方に突進しようとしたんだ、公爵様の視察団がいるし、何より村人もヤバイ、そう思って気絶させようと強めに攻撃したんだ」
「そうしたら、死んでしまった?」
「あぁ、死ぬような攻撃じゃなかったんだけどな、意味が分からねぇが、泡吹いて死んじまった」
フレイアが顎に手を当てる。なぜかわからないという顔だ。
「切迫した状況で力んでしまったとかは?」
自分は危険というほどの危機ではなかったとしても、か弱い村人や公爵の視察がいる状況だった。話からそれを意識していたのは確実だ。何とかしなければ、と焦ってしまった可能性は充分ある。
「いや、自慢じゃないがアタイなら力んじまったんだとしたら、ビーファローくらい木っ端みじんだ」
「……剣は使ってないの?」
「使ってないぞ、殺しちゃいけねぇから、素手でやった」
てっきり剣を使っていたのかと思っていた。
「あぁ」
急に思い出したという感じで声をあげるフレイア。
「そういえば、変な事を言われたな」
「なに?」
「あれだけビーファローを斬りつけておいて、殺す気がなかったは通らないって」
訳が分からないという感じでフレイアが続ける。
「なにか勘違いしてたのかねぇ、アタイは剣を使ってないのに」
「そ、そう」
こ、こいつは馬鹿なんだろうか。それとも人を疑うという事を知らないのだろうか。トーマスも同じような感じになりそうだから、気を付けておかないと簡単に誰かに陥れられるわ。
とりあえず驚きを抑えつつ、確認を続ける。
「もしかして、誰かにどこかへ行くように頼まれていないかしら?」
「あぁ! 良く分かったな!」
なぜか嬉しそうにしてフレイアがそう答えた。
「そ、そう……誰に?」
「当時、参事長だったアイツだ、次に公爵が視察に行くのがあの辺だから、先行して向かってほしいって言われてな、他のやつもあとから向かわせるからって……アタイも当時の副団長も、腕っぷしだけで、荒事以外は全部アイツの指示に従ってたからなぁ」
「……アイツって、名前は?」
「あぁ、わりぃ、ヘンリーだよ、今は何やってるのか知らねぇが」
「……わかったわ」
フレイアがとてもバカなのはわかったが、それはとりあえず置いておくとして。騎士たちの名前なんていちいち覚えていない。騎士団長のおっさんに確かめないといけないわね。
「それじゃあ、また……近いうちに外で会う事になると思うわ」
「外? なんだ、それってどういう……」
本来なら自分で真実にたどり着いててもおかしくない。それができない相手に説明するのは、さすがにしんどい。
フレイアの問いかけには答えず、背を向けて手だけ振って外へと向かった。




