3-14こんなに簡単で逆に不安になる
「頼みがある」
しばらくして胸に押し当てていた手紙を、こちらに差し出してくる。
「こんな大事な物、ここに置いとけねぇ、預かっておいてもらえるかい?」
こんな紙切れを、なんで私が大事に保管しておかなければいけないのよ。そこまで考えて、いや、と思い直す。受け取ってやれば信頼を勝ち取れるか。情に弱い手合いはそういうものではないか。
「……そうよね、ここでは大事な手紙が劣化してしまうわね」
手紙を受け取り、フレイアがしたように、一度胸に押し当てる。それからポケットに戻した。
「預かるわ、大事に保管すると約束する」
「ありがとう……あんた良い奴だな」
わずかに涙ぐんでいる様だ。手紙一つ、言葉一つでこんなに簡単にほだされるとは。ちょろいw
「……そんで、あの時の事件だったか、何が聞きたいんだい?」
とても馴れ馴れしい態度、砕けた態度だった。本当に簡単すぎる。これでは逆に騙されているのでは、と疑ってしまう。まさか私が帰った後、ほくそ笑んだり、高笑いしたりしないわよね。
ビビり散かしていると、キョトンとした顔をフレイアが浮かべているのが見えた。かすかにトーマスに似た犬っぽさがある。トーマスを信じよう。
「失礼……もう五年が経ったのだけど、あなたが投獄された事件についてね」
「もう五年か、結構経ってるとは思ってたけど、そんなにか」
少し寂しそうにフレイアが呟いた。五年という時間を無駄にしているのは、相当に堪えるのだろう。
「えぇ」
少しの間、私は待つ事にする。うやむやだった時間が、はっきりと突きつけられたのだ。思う事もあるだろう。
ややあって「悪い」とフレイアが苦笑いを浮かべる。私は「いいの」とだけ返した。
「遮ってばっかで悪いな……それで?」
続きを促されて、まずは聞きたかったことをぶつけてみる事にする。
「その時に暴れたビーファローを、どうして殺したの?」
角のある体のでかい四つ足の生物だ。見た目は凶暴そうだが温厚で、こちらから何かしない限り襲ってはこない。ビーファローが村の周辺に生息していたおかげで、村は比較的安全らしい。見た目が厳ついため、ちょっとした危険は寄ってこないという事だ。村の者はそれに感謝し、ビーファローを世話してやることがたまにあるらしい。軽い共存関係といったところか。
「殺すつもりはなかった……と言っても信じてくれねぇだろうな」
おそらく、何度もそう訴えたのだろう。だが実際死んでしまっているし、そんなのただの言い訳に過ぎない。それに国令の決まり上、殺す気がなかろうが、関係ない。少し良い訳としてはズレているが、それは今はいい。




