3-13フレイア
一瞬、反応が無く死んでいるのか、という考えが頭をよぎる。
「……誰か、呼んだか」
声がする。死んではいなかったようだ。フレイアは顔をあげると、ゆっくりとこちらに視線を向けた。その眼差しは、それほど弱っている印象はうけない。
「……ふぁぁぁ」
突然、気の抜けるような声をあげてフレイアが両手をあげる。何をしているのか、一瞬わからなかったが、あくびをしながら伸びをしている様だった。
「アタイに何か用かい?」
ゆっくりと立ち上がると、あまり貴族の子女らしくない口調でそう問いかけながら、こちらに歩いてくる。しっかりとした足取りに、全くやせ細っていない体。魔力のおかげだろう。今すぐにでも動けそうな状態だ。さすが元騎士団長。
「聞きたいことがあって来たのよ、五年前の……」
よく考えれば、ずっと牢に入れられていたのだから時間の感覚は狂っているだろう。事件から何年たったかなど、わかるはずはない。
「失礼……あなたが密猟者として投獄された原因の事件……女の子を助けたアレ、それについて聞きたいのよ」
「あぁ、なんで今さら」
わからないという感じで返してくる。それから鉄格子の前に腰を下ろすと胡坐をかいた。布切れ一枚の囚人服だから、大事なところが見えそうになっている。
「あなたはレディとしての在り方を……いや」
ルーの呆れた顔が思い起こされる。私が言えた事ではなかった。だからといってこれから気を付けるなんて事もしないし、ルーの気持ちも理解しないが!
「レディ?」
「いえ、いいの……それより話を戻すわよ」
ポケットに入れてあった、女の子からの手紙を取り出す。ポケットがあるのは便利だ。ドレスには無いから、小物を持ち歩くのが困難である。外出着の有難さを噛み締めつつ、手紙を掲げてみせた。
「あなたに手紙が届いたのよ、だから今さらなんていわないであげて、おそらくだけど必死でお金をためて代筆に依頼して、やっと今お礼の手紙を出してきたのだから」
フレイアがその手紙を見て、ハッとする。ここまでの話の流れから、この手紙が誰から送られてきたか察したようだ。
こういう手合いは大体情に弱い。よってちょろいw
「あの子が」
やはりフレイアも例にもれず情に弱い様だ。頑張ってお金を貯める女の子の姿でも思い浮かべたのか、目頭の辺りを押える。
手紙を差し出すと、大事そうに受け取ったフレイア。手紙を読みさらに感動している様子だった。効果抜群。ちょろいw
「アタイの為に……頑張ったんだな」
手紙を読み終えてそう呟くと、便箋を綺麗に封筒に戻す。それから胸に押し当てて両手でギュっと力を込めた。




