3-11子犬君の怒り
「失礼ですよ、ヴィオラ様は良き領主、良き指導者です、民の為に動いている」
トーマスはすごみながら、騎士団長にそう言い放った。あっキュン。かっこいい。
体の大きさはトーマスの方が二回り位小さいが、圧力は同じくらいに感じる。私の為に怒ってくれているのね。子犬なのに、ここぞという時は大人の男の顔。やさしさの中に不意に見える荒々しさ。あっキュン。
「うおほんっ……トーマス、いいわ、下がりなさい」
そう命じても、しばらくひかずに睨みを利かせていたトーマス。仕方がないので、もう一度名前を呼ぶ。それでやっと元の場所に戻ったが、納得していない様に少し膨れている。そんなに悔しかったのだろうか。
「ありがとう、トーマス、私の代わりに怒ってくれて」
少し膨れてうつ向いて隣に座っているこの子犬。抱きしめて撫でまわしたいところだが、何とか抑えて頭を撫でるだけに留める。それでやっと顔をあげたトーマスは、申し訳ないという顔に変わった。
「慕われているな、それで信頼できる……すまなかった」
後ろから騎士団長の謝罪が聞こえてきた。
「いいわよ、別に」
振り向かずにそう返しておく。実際、騎士団長の予想は当たっていたのだから。それにしても勘違いしてくれて、ちょろいw
「私の方こそ、失礼な態度を……申し訳ありません」
トーマスの声が聞こえる。冷静になったらしく、今の状況に合わせて振り向かず言葉だけで騎士団長に謝罪した。
「はい、じゃあ仲直りという事で……あまり長く寄り道はできないわ」
まっすぐ館に向かっていれば、それほど時間は経過しない。にもかかわらず、あとから出発した者が私たちより先に館に到着した、なんて事があったら何をしていたと疑われてしまう。まぁ言い訳用にトーマスを撫でているのだが。しかし父上は最近、私を疑うような目で見ている。あまり目につきたくない。
「それじゃあ、あなたの騎士団本部でできない話を、聞かせてもらえるかしら?」
騎士団長の話では、主に副団長が罪の偽装に協力しているらしい。団長はそれを何とか防ごうとしているが、結局うまくいっていない。自分自身の立場も危うくなることを考えると、強く出れないらしい。妻子がいて、生活を守る事を考えてしまうそうだ。
それから、五年前の事件。怪しい所があるらしい。突然凶暴化したビーファローは温厚で怒らせる事でもしない限り、暴れるようなこともない。それにフレイアがたまたま一人になったタイミングだった事も怪しいと思う要因らしい。
現在の副団長は、自分より貴族としての地位が低い者をかなり嫌っていた。フレイアに関しては身分が低いうえに、女のくせに自分より上にいるなんて。そんなぼやきを聞いたことがあるらしい。




