3-10はぁはぁ
「まずはお嬢様の真意をお聞かせ願えるか」
騎士団本部を出て、館へと行くための最短ルートから外れた広場。そこまでついていったところで、騎士団長がそう切り出す。変に隠れて話をするより、こっちの方が不自然ではない。私はベンチに座ると、休んでいるような感じを出した。意図を察したのか騎士団長も、ベンチの裏側に移動した。おそらく背中合わせになる様に立っているのだろう。
「あなたが父上の傀儡ではない証拠は?」
「お嬢様がお父上の傀儡ではない証拠は?」
意趣返しという様な感じの返しだった。確かにお互いその証拠は持っていない。こうなると、無条件に信頼して話をするしかないだろう。あまり気が乗らないが、仕方がなかった。
「トーマス、立ってないで隣に座りなさい」
「え、でも」
反論するトーマスの腕を掴むと、引っ張って隣に座らせる。ここぞとばかりに密着しておく。
「ちょっ、ヴィオラ様」
「こうしておけば、色ボケバカお嬢様が可愛い少年使用人に色目を使っているようにしか見えないでしょ……目撃情報もあるから後々言い訳にも使いやすいわ、これでまさか騎士団長と真面目な話をしているように見えない、ふふっ」
はぁはぁ。良い匂いがする。トーマスの肩を抱き寄せつつ、肩の辺りを撫でる。トーマスは赤くなってうつ向いてしまった。さっき抱き着いてきたのに、これは恥ずかしいのね。キュン。
「おい、偽装工作はいいが、話を」
じれったくなったらしい騎士団長の声が聞こえてくる。忘れてた。
「……自分自身の人を見る目を信じる」
こちらから話すのが礼儀だろう。騎士団長は何かすれば消される可能性がある立場だが、私は少なくともすぐさま消されるようなことはない。危ない橋を渡っているのは騎士団長の方だ。
「私は地下牢に投獄されている無実の罪の者たちを解放したいのよ」
お金の為というのは、伏せておこう。
「可能なら、元騎士団長のフレイア様を解放したいです」
トーマスが急いで付け加える。
「そうか、あんた変わったな、てっきり父娘で同じクソだと思っていたが……もしかして、同じクソだが父親の立場を奪うためにやってるとかか、正義感なんてものじゃなく」
当たりである。正義感というより自分の欲の為。平民やら庶民がどうなろうが知った事じゃない。私が贅沢をしても傾かない程の盤石な領地が欲しいだけだ。その一つの過程として無実の罪で囚われている者たちを助けたいというだけ。
騎士団長の言葉で、トーマスの顔の赤みが消えた。それから立ち上がり、騎士団長の対面に移動する。そして騎士団長と真正面から対峙した。
「あっ、トーマス」




