3-9子ども扱いしやがって
騎士団長になるには、貴族でなければならない。つまり、平民でなければ下位の貴族でも就任することができるのだ。実力が必要ではあるが。この男はそれなのだろう。なぜだかそういう実力のある者は、権力に媚びたりしない。
ちなみに一般騎士はすべて平民だ。役職を得るため、つまり出世するためには貴族である必要がある。どれだけ頑張っても平民に出世の目はないのだ。これも社会階級の固定化だろう。いつかこれにも手を加える必要があるだろう。
「それで、どのようなご用件で?」
やはり気だるそうに問いかけてくる。
「館の地下牢に投獄されている者たちについて、よ」
それを聞いた瞬間、騎士団長の表情が今までとは打って変わって、険しさをおびる。
「他の牢に関しては、気にしないので?」
「えぇ、館の地下牢のみよ」
館の地下牢。あそこには父上の意に反した者が、無実の罪で多く投獄されている。私自身は関わっていないため、確実な証拠を握ってはいないのだが。
だが凶悪な真の犯罪者ではないため、父上は自分たちが住んでいる地下に投獄されていても、安心していられるのだ。
そもそもあの館に牢など必要ない。しかし、地下牢を設けた。あの父上の事だ。より後悔させるために、身近なところに牢を作り、意に反する者をいれているのだろう。理解できるし、私も大いに賛成ではあるが、維持管理にかかる費用を考えるとやはり必要ない。
私が言いたい事を察したらしい騎士団長は、少し前傾姿勢になりこちらに顔を寄せる。
「ここでその話はするべきじゃない」
そんな事を小声で耳打ちしてくる。それから姿勢を戻して、出口の方を優雅に指し示して言った。
「全く困ったお方だ、護衛を置いてきぼりにした挙句、迷子になったからここに助けを求めてきたのでしょう……まだまだお子様なのですからベビーシッターが必要なのですよ、やれやれ」
「子ども扱い……おっさん、仕返しのつもりかしら?」
ニヤリと笑う騎士団長。少しすっきりした顔をしやがる。
「これから館の方に向かう用事がありましたので、私がご案内しましょう」
「……よろしくお願いするわ」
腹立たしいが、ここは抑える。ここでは話せない話。つまり騎士団内の父上に協力する者に、反目しているという事だろう。印象は正しかったらしい。この騎士団長は雰囲気というか、立ち振る舞い的に悪事に協力できるタイプではない気がしていた。
どんな話ができるだろうか。罪の偽装工作の証拠をすでに掴んでいたりすれば、楽でいいんだが。




