3-8騎士団長
「……外魔力でも内魔力でも、要は使い様なのよ、工夫すれば似たようなことはできるわ」
私の言葉にトーマスの目が輝くのがわかる。
「でも、まずは基本よ、トーマス……いきなり応用なんて思ってはダメ」
「……はい、そうですよね」
図星だったのか尻尾を落としてしまったように、トーマスは肩を落とした。撫でまわしたい気持ちを抑えながら、騎士団本部の出入り口に向かって進む。
中に入ると騎士たちは、たむろっていた。ここに出勤してきて、ここからそれぞれの配置に向かう。だから朝方の今なら、騎士団長を捕まえられるとふんだのだ。秘密の話をする為に、館以外が丁度いいという狙いもある。
何人かの者が私の顔を見て目を見開く。それから片膝をついて軽く頭を下げた。騎士の礼だ。おそらく館か、その関係の配置の者だろう。礼をした者たちを驚いて眺めていた者たちが、やや遅れて礼をする。この者たちは館から離れた場所の配置なのだろう。父上ならまだしも、私の顔をあまり見たことがないという感じだ。
「突然の訪問失礼するわ……皆仕事に戻りなさい、礼はこれ以上不要よ」
そう声をかけると、恐ろし気にしながらも、皆がそそくさとその場を去っていく。私に何を言われるか恐ろしくて、早くこの場を離れたいのだろうと思う。
その場に人がいなくなった頃、誰かに呼ばれたのか騎士団長が姿を現した。
「おいおい、朝礼がまだだぞ、誰もいないじゃないか」
そこまで言うと、こちらに視線を向けてズカズカと少し不機嫌そうに近づいてくる。
「お嬢様のおかげですか」
おかげというには、嫌味たっぷりな言い方だ。
「……どのようなご用向きで? ここはあなたがこられるような場所ではありませんが?」
「歓迎してくれないのかしら? 嫌われたものね、悲しいわ」
「いえいえ、嫌いなど滅相もございませんよ……ただあなた達のおかげで、私は街の嫌われ者ですからな、思う所はございますよ」
かなり前の話だが、魔法放送の時この騎士団長を悪者に仕立てあげた。父上を悪く言う訳にもいかず、騎士団長へと矛先が向いたままなのだろう。それにしてもいまだに尾を引いているとは。
「あれからそれなりに経っているのに、まだそんな目に?」
「ヴィオラお嬢様、あなたの人気が高まるほど、街の者はあの時の悪者と思い出すようです」
言葉の最後に盛大なため息をついた。この騎士団長はそれほど私を恐れていない。珍しいタイプだ。権力を恐れていない。




