3-5ルール
「おかしいです」
眉をひそめて深く頷きながら、トーマスも同意の声をあげる。
「害獣ではなかった、という事なのだよ」
アリードの言葉に、ルーは納得できないという感じで顔を横に振る。それからさらに声をあげようとして、それを私は止める。
「ルー、やめなさい」
「……申し訳ありません」
こちらに顔を向けて、ルーが頭を下げる。頭は下げたものの、顔を上げた後はもちろん納得していないという感じの表情だった。
「トーマス、復習よ、害獣とはなに?」
スラム街の市場化の際に、農地予定地に害獣討伐へ行った。その時に話をした事だ。あの時は理解が甘かったが、それから経過した時間でしっかり勉強もしている。もうちゃんと答えられるだろう。
「……人間以外の生物であり、人間に害を及ぼしたと認定を受けた個体を害獣と言います」
淀みない答え。しっかり理解している。納得しているかは別ではあるが。
「えぇ、そうね……では害獣以外を討伐した場合はどうなるのかしら?」
そう質問すると、トーマスは少しだけうつ向いた。それでも問われていることを無視することはしない様だ。
「……密猟として罪に問われます」
「……フレイアさんは助ける為だったのに、それでもダメなんですか?」
やっぱり納得できないという感じで、そう声をあげるルー。それに対してアリードが優しく言葉を返した。
「では考えてみるのだよ、ルー君……襲われたら害獣として討伐してもいいという事にした場合、何が起こると思うかね?」
その問いかけは教師が生徒に教える様に、丁寧な口調だった。トーマスもそうだが、ルーは素直でいい子だ。悪人の考えにはたどり着けないかもしれない。
案の定、ルーはしばらく考えても答えを出せなかった。
「密猟が横行するのだよ……例えば害獣ではない貴重な魔法生物がいるとして、温厚で凶暴ではないから討伐する必要性がないとする、だが先ほどの襲われたら害獣として討伐していいとなっていたら」
「……討伐なんてされないのでは」
やはりルーは悪い事ができない。
「襲われたから仕方なく害獣として討伐したという者が現れるのだよ、証明するものは無いし、個人の判断に頼る形になるため、そうなる」
目を見開いて、それからルーがうつ向く。納得はできないが、理解はした様だ。残念ながらこの世は悪い奴ばっかりだ。
「補足をすると、問題がもう一つ出てくるわ……害獣の定義に人間以外の生物とあるでしょ?」
この辺りも悪い奴らの思考だ。この子たちでは到底思いつかないだろう。




