3-2ちゅきです
「お屋敷に届いたのですが、みんな騎士団長のお姉さんという所に引っかかり、最終的に私が引き受けたのですが……」
ルーも平民だ。識字率についても理解しているだろう。手紙を見て事情をくみ取ったという事か。それで無下にする事もできずに、なんとか宛先の人物を探したかった。
申し訳なさそうに、ルーが私を見つめてくる。言葉の続きを言うか迷っている様だ。
「なに」
「……ヴィー様程の身分があれば、中身を見ても咎められないのではと」
そう言って、申し訳なさそうに差し出していた手紙を、押し付ける様に私へ寄せてくる。確かに私を咎められる者はこの屋敷にはそういない。というか、朝食の件に小言が無かったのも、この手紙の事を頼むためだったという事か。
ここで私の威厳を取り戻すために、一発かましてやろうかしら。キチンと名前を書かないのが悪いと。そんな風に考えながら手紙を受け取らないでいると、ルーが「お願いします」と目を潤ませる。
「はぁ……仕方がないわね」
私も甘くなったものだ。一発かますこともできないとは。
ティーカップをサイドテーブルに置く。それから渋々手紙を受け取ると、目を潤ませていたルーの顔が一変し、笑顔になった。
「ヴィー様、やっぱりお優しい……庶民の味方ですね、大好きです!」
ルーの突撃のような抱き着きを、私は避けようとして失敗し、二人でベッドに倒れ込む形になった。
「や、やめなさい! 別に優しくなんかないわ! 暇つぶしよ!」
別に優しさなんかではない。決して。ちょっと暇だった。気が向いただけ。
「もぉ、恥ずかしがり屋ですね、ヴィー様は」
「恥ずかしがり屋でもないわ! というか主人になんて真似するの、それにこれじゃあ手紙が読めない、離れなさい!」
私が言っているのにルーはしばらく離れない。それどころか顔を胸の辺りに押し付けて「むー、そんなヴィー様がちゅきです」と意味の分からない事をのたまう。そしてさらに抱きしめる力を強めた。こいつ、本当に私をどれだけなめくされば、気が済むの。威厳も何もあったものじゃないわ。
やっとの思いで、ルーを引き離して手紙を眺める。やっぱり人の手紙を開けるのは、気が引ける。いや、何を考えているの。私としたことが。そんな事知った事じゃないわよ。
手紙の封を開けて、中身を取り出す。中に入っていたのは便箋が一枚。それほど長い文章ではない。自分を助けてくれた事に感謝する内容、それからお礼が遅くなったことを謝罪する内容だった。
「……何かわかりました?」
不安そうにルーが問いかけてくる。それに対して頷いて返した。この子供は襲ってきた生物から自分を守ってくれた女性騎士団長に手紙を宛てている。
手紙の内容から、ある事件を思い出した。該当する女性の騎士団長というのは、一人しかいない。
「この手紙の宛先は、残念ながら地下牢ね」




