3-1ヴィオラついに刺される
目が覚めるまで寝て、起きたら豪華な朝食が運ばれてくる。これほどまでに贅沢な事はない。
「ヴィー様、いかがですか?」
ご機嫌な様子で、ルーが問いかけてくる。
「えぇ、やっぱりいいわ」
普段は食堂で食事をするのだが、昨日思いついてルーに命じておいたのだ。命じておいて驚いたのだが、こういうわがままを言うと必ずあるルーの小言がなかった。レディとしてベッドで食事なんて、とか言われるかと思ったが。
「ふぅー」
食後の紅茶を楽しんでいると、珍しくルーがそわそわとしていた。落ち着かない様子で、エプロンのお腹の辺りに手をかざしたり離したり。それからこちらの視線に気づいて、意を決したようにエプロンのポケットから何かを取り出した。
「ヴィー様、すみません!」
とりだした物を手に、ルーが迫ってくる。少し勢いがあってついに刺されるのかと思ったが、手に持っていたのは白い封筒だった。手紙の様に見える。
「……もうちょっと言葉と行動を選びなさいよ、刺されるかと思ったわ」
「えぇ?!」
自分の行動に自覚がなかったのか、ルーが驚いて声をあげる。トーマスがこの場に居たらもしかしたら、ルーを取り押さえていたかもしれない。
ちなみにトーマスは年頃とかいう理由で、私の身の回りの世話を命じられなくなった。ルーがそうするべきだ、と強く進言してきたのだ。トーマスも顔を赤らめて、それに同意していた。せっかく自分好みのイケメンに育ててきたのに、はべらせるのが難しくなってしまった。身の回りの世話をさせれば、自然とそういう流れに持っていきやすかったのに残念である。
「それで、なによ? 手紙?」
今の行動を反省していたルーが、迷ったように手紙を差し出してくる。私宛ではないようだ。
「騎士団長のお姉さんへ? お姉さんって、騎士団長はおっさんよね」
騎士団長の顔を思い浮かべると、魔法放送をした時の何とも言えない顔が、どうしても浮かんできてしまう。あれが一番強く印象に残っているのだろう。
「騎士団の女性騎士と間違っているのかな、と思ったんですが、何人かいらっしゃるので、誰かわからなくて」
宛先と違う人物に渡してしまうのは良くない、とルーは考えたのだろう。しかし私に相談されても結果は同じである。騎士団長のお姉さんが誰なのか、わかるはずもない。
「というか、何よ、この手紙」
宛先の拙さから子供っぽいのだが、書かれている字が子供とは思えないほどキレイである。なんともチグハグな印象。考えられるとしたら、どこかの子供が代筆屋に頼んだのかもしれない。識字率が高くないから周りの大人でも手紙を書けなかった。それでお小遣いを貯めて、依頼したという感じかもしれない。




