2-21導く役目
「……農業について、知識があるのかしら? 学び、皆を導く者が必要じゃないの? 先に行った体力自慢の者たちが頭脳労働や皆を導く役目ができるのかしら? 頭脳労働といえば、金勘定だって教えてやるか、それを担当するする者が必要よ」
つい続けてしまいそうになり、そこで言葉を切る。さすがに教えすぎてしまった。一応老婆たちの方を振り返ると、皆揃って驚いた顔を浮かべていた。今まで全くそういう事を考えなかったのか。まぁ、これまで今日を生きるのに必死だったから、仕方がないのかもしれないが。
「頭を使いなさい、むしろあなた達の様な者はいなければいけないわ」
老婆がその言葉を受け止めて、一度目を閉じて噛み締める様に深く頷く。それからこちらに深く頭を下げてきた。
もうこれ以上構っていられない。そろそろ始めよう。ここで話は終わりというつもりで、老婆たちに背を向けて歩き始める。愚物たちがたむろっている方だ。
「……シズク、あの老婆たちを連れて行きなさい、もう大丈夫だと思うけど、死なせずに送り届けなさい」
「はっ」
どこからともなく声が聞こえる。さっきは姿が見えていた気がするが、すでにどこにいるかわからない。まぁそれはどうでもいい。もうすぐ始まる事は、あの老婆たちにも見せるべきではないだろう。
「ヴィオラ様はやはりお優しいですね」
アリードが、そんな言葉を口にしながら横に並ぶ。優しいって、革命の方に傾かない様にである。別にあの者たちの為ではない。というより。
「これから起こる事をわかっていて、言っているのかしら?」
「もちろん……それでも、です」
「……そう」
思うのは勝手である。私がとやかく言う事ではないのだ。
「あなたたち、お味はいかがでしたか?」
そう問いかけると、愚物たちがにやつきながら口を開く。
「えぇえぇ、とってもおいしかったですよ、へへっ、いつもありがとうございますぅ、でもなかなか体力が戻らなくて、まだまだ世話になりますぜ、おっじょうさまぁ、へへっ」
気持ち悪い笑顔だ。しかも連動したように、すべての愚物どもが同じような笑顔を浮かべる。私が何もわからない、何も気づいていない、お気楽なお人好しお嬢様だと思っているのか。それを馬鹿にしているような笑顔に見えた。少しイラつくのを抑えつつ、私はある調査内容を口にする。
「あらぁ、体力が戻っていない? その割にご活躍だったようですけど……具体的には夜に、街の方で、ですよ……心当たりはございますよねぇ?」




