2-16そんな事、私の知った事ではないわ
害獣討伐を行った時から少し時間が過ぎたある日、私たちはスラム街までやってきていた。
相変わらず汚く酷く臭う場所だが、ここで市場をひらけるとなれば希望者たちが勝手に綺麗にしてくれると、予想している。私たちはほとんど身銭を切らずに、事を運べる訳だ。あとの問題は住人たちだけだ。
今後の事を住民たちに伝えるため、スラム街の中でもある程度広い場所を見つけて、さっそく住民たちを集めた。兵士たちを使って半ば強引にここに集合させたため、怯えている者や無駄に反抗的な視線を向けている者がほとんどだ。その者たちの前に立ち、私は声をあげた。
「こんにちは、スラム街の諸君、良いランチ日和だ」
今は昼頃。ちょうどランチの時間である。空もすっきりと晴れて、外で食事をするのが気持ち良いと思う。まぁこんな汚く臭う場所で食事など、私はごめん被るが。しかし、ここに集められた者たちは喜ぶだろう。それだけ食べられない日々が続いているはずだ。
声をあげようとした者もいたが、力が出ないのか途中でやめてしまった。あるいは貴族に楯突くことの恐ろしさを、ちゃんと理解しているのか。
「あなた達にいい知らせがあるわ、ここに市場を開くことにしたのよ、誰でも店が出せる市場よ、もちろんあなた達も店を出して、お金を稼ぐことができる」
一部の者たちを除いて、その場にいた者たちの顔に希望の光が差し込む。だがすぐにその希望の光は消え失せて、表情は曇ってしまった。すぐに現状と先の事を思いついたらしい。
そんな中で勇気ある一人の老婆が、おずおずと声をあげた。皆を代表するように、あるいは年長者として、怖いと思いつつ、しかし少しの義務感をおびた表情だった。
「それは良い考えですが、ですが……私たちはどうすれば、ここに住むことができなくなるのでは……それに我々に売るものなど……体力もほとんどありません」
「そんな事、私の知った事ではないわ……と、言いたいところだけど」
一瞬悲鳴に近い声が上がったが、言葉の続きがあるのがわかり鎮まった。本当ならここにいる者を全部掃除して、市場を作ってしまった方が簡単なのだが、その分税収が減ってしまう。選別して使える者は使う。確実にその先の利益と信用に繋がるのだ。
「あなた達には別の住処を貸すわ、そこで住みながら農作物を作りなさい、保存のきく穀物等を一部作り、私に借地料として納めなさい、あとは好きなものを作り市場で売るなり、自給自足するなり好きにすればいいわ、ただ軌道に乗ってきたらあなた達からも徴税するから、どのみち市場での販売は必須だと思うけど」




