2-15幸運だったわ
そんなことを考えているうちに、盛り上がった土の中からビッグアースワームが出てくる。勢いよく出てこなかったおかげで、つぶてに襲われることはなかった。ゆっくり出てきたのは襲う意思がないという事か。
「襲ってこない?」
トーマスが驚いたように呟く。少しの間様子を見ていると、やはり襲ってくる意思は無さそうだった。それに変異体ではなく、普通のビッグアースワームだ。本来人を襲うような生物ではない。心配するような事態にはならない様だ。
少し安心した所で、出てきたうちの三体が横たわっている変異体を頭で小突いた。生死を確認している、という様な慎重さを感じる。
「変異体? それがどうしたんでしょう?」
トーマスがそんな疑問を投げかけてくる。私だってわからないが、もしかしたらと一つの可能性をあげてみる。
「もしかしたら、倒されたことを喜んでいるのかしら」
「仲間を倒されたのにですか?」
「想像だけど、現時点でかたき討ちの為に襲われていないという事は、仲間ではなかったかもしれないわね」
仲間意識という物を持っているのか分からないが、この数が一緒に行動しているという事は、その可能性は高そうだ。そう考えると、また新たな考えが浮かんでくる。
「……もしかしたら凶暴化した変異体が通常体を虐げていたのかも、それで逃げ出すこともできなかったから、倒してくれてありがとうみたいな」
意思疎通ができないため、正解は分からないが。
「なるほど」
そう言いながら、トーマスは剣を構えるのをやめる。それを見たからなのかわからないが、ビッグアースワーム達がゆっくりと地中に戻っていった。とりあえずよかった。
「幸運かもしれないわ……ここにはビッグアースワームがいる肥沃な土地なのがわかった、人間を襲う意思もない、良い場所を手に入れたわ」
これで本格的に動き出せる。これから忙しくなるわ。
「トーマス、護衛の兵士たちを呼んできてもらえるかしら」
変異体の死骸は兵士たちが運ぶ。最初からそのつもりで、準備させていた。ビッグアースワームなど金にならないから手間ではあるが、ここに放置しておくわけにもいかないのだ。無いとは思うが、万が一死んでいるのを発見されて、討伐報告が父上の耳に入ると面倒なのだ。害獣の脅威がまだあると思わせておけば、それが良い目隠しになる。まぁ、害獣がいること自体、把握していない可能性もあるが。念には念を入れて。
トーマスが「はい!」と、元気よく声をあげると走り出す。剣を握ったままだ。鞘も用意してあげなければいけないか。すぐ使わなくなるとしても、そのままでは不便だ。




