2-14油断したわ
本人が気に入っているならいいが、大事にしすぎても困る。剣が壊れたら死ぬような重要な戦いでは、さすがにそんな剣では怖い。まぁ子供時代にそんな戦いに出る事もないだろうし、交換する機会もあるだろう。何よりすぐ壊れるはずだ。そんなに気合を入れて作っていないのだから。
「それより、気を抜いたらダメよ」
「はい!」
剣を手に入れてテンションがかなり上がったのか、良い返事をして体を反転させるトーマス。それから感触を確かめる様に、一度剣を振った。
「よし!」
そんな声と共に、剣先を目線のあたりに置くベーシックな構えをとった。私は少し距離をとり、戦いの行く末を見守る事にする。
※
「……勝てました」
横たわった変異体を前に、トーマスが信じられないという感じで声をあげる。予想通りの結果だったが、本人にしては信じられない結果らしい。先ほどと同じように変異体が地面から飛び出してきたのを素早く避けて、横腹から切り裂いただけだ。本当に大したことをしていない。それでもトーマスにとっては、初めて得た一勝だ。価値がある。
「よかったわ……ケガはないわね」
「はい! ご心配には及びません!」
覚えたての敬語を使いたくてしょうがないのか、少し得意げにするトーマス。尻尾を振っているようにしか見えない。可愛らしい。本当に子犬の様だわ。
そうしてほっこりしていると、自分たちの周りに起こっている異変に気付くのが遅れてしまった。何かに囲まれている。地面が私たちを囲むように、盛り上がり始めている。
「しまった、油断したわ」
トーマスもさすがにこれにはすぐに気づいて、剣を構える。しかし一周囲まれていて、どうすれば私を守れるか迷っている。剣先が左右に揺れて定まっていない。
「もしかして、変異体の仲間かしら、一体と聞いていたけど」
盛り上がった土は、今にもつぶてが飛び散りそうだった。それが全方位。私なら負けはしないが、害獣認定されているのは一体だけだ。ほかに変異体がいるとして、それらはまだ害獣ではない。権力でもみ消せばいい話だが、確実に父上が私たちの動きに気づいてしまう。
「私たちが最初に襲われる人間になってしまうなんて、不運だわ」
害獣に関する法の具体的な事例を、権力でどうにでもできる私といる時に目の当たりにしてしまうとは、ある意味トーマスは運がいいかもしれない。
「仕方がないかしら」
無抵抗でやられるのは癪だし、倒すか。計画を練り直すことを覚悟して、魔力を沸き立たせる。




