2-13一生大事にします!
普段は属性魔法は使わないのだけど、無属性魔法では剣を作り出せない。久しぶりだけどやってみるか。
魔法には属性魔法と、無属性魔法がある。いつも使っているエクスプロージョンは無属性魔法だ。自分の純粋な魔力のみを飛ばして爆発させる魔法。
そして今から使うのが属性魔法だ。人間は魔力を持っているが、その魔力を属性の帯びた魔法に変換することはできない。だから精霊と対話して、助けてもらい魔力を変換してもらう必要がある。
この属性魔法は正直、詠唱をしなければいけないため面倒なのだ。詠唱は一言一句決まっている訳ではないから、間違っていてもいいのだが、それでも無属性魔法の方が楽である。精霊との対話なんてせずに、いきなり撃てるのだから。
ちなみに魔法名もわざわざ言う必要がないのだが、私は相手に畏怖させる目的で口にする様にしていたら、癖で毎回魔法名を唱える様になっていた。
「ふぅー」
一度大きく息を吐く。普段やらない事だから意識して集中をする。魔力を沸き立たせて右手を前に突き出すと、手のひらを大地の方に向ける。
「土の精霊よ、大地の眷属よ、我が願いを為すためにこの魔力を捧げる」
詠唱に応じる様に、手のひらに集中させた魔力が大地に吸い込まれていく。精霊との対話がうまくいっているらしい。
「大地を為すその一部を、誇りを守るため、信念を守るため、そのための形を成して我に与えよ」
大地から黒い霧の様な細かい粒子が、手のひらに集まってくる。大地に含まれる鉄。それが集まっているのだ。剣が作れる程度には、鉄があったようでよかった。
「上手くいったわね」
空中で集まった細かい鉄が、剣の形に変わる。それから凝縮を始めてしっかりとした剣に出来上がった。それを掴むと、きちんと剣になっているのがわかる。数回振ってみても自壊する様子もない。子供には少し長いかもしれないが、シンプルなロングソードが出来上がった。
しかし、色が真っ黒である。まぁ鉄鉱石なんてあるわけないのは分かっていたが。とりあえずの間に合わせの剣だから、変異体を倒す間くらいはもつだろう。何せあの変異体は強くないのだから打ち合う様な事はない。一太刀を浴びせるだけで終わると思う。
「トーマス、これを使いなさい」
出来上がった剣を見せると、目を輝かせたトーマスがこちらに猛烈な勢いで走ってくる。次の瞬間にはその勢いを一気に殺して、大事そうに剣を受け取ると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「先ほどまで剣はなかった、という事はヴィオラ様が作ってくださったんですか?!」
「間に合わせで作った粗悪な剣よ」
「粗悪だなんて! 一生大事にいたします!」
そう宣言するとうっとりとした表情で、トーマスが受け取った剣を優しく抱きしめた。それから愛でる様に撫でる。
「一生はさすがに」




