2-12あぁ、なんか揺れてる感じがする
「あぁ、かすかに揺れている感じがするわぁ、これ、何かしらねぇ」
私があげた声に反応して、トーマスがこちらを振り向く。接近についに気づいただろうか。
「それって、めまいでは……地面が揺れてるわけではなく、自分が揺れているというか」
「自己管理ぐらいしっかりできてるわよ!」
何と感の悪い子かしら。それとも私の事が好きすぎるのかしら。いや、今はそれどころではない。
「それより私はいいから集中なさい……あぁ揺れているわ、近づいてきている感じ……ほらトーマス前を向いて」
本当は駆け寄りたいっと言わんばかりの表情だったが、トーマスは視線を戻した。もともとしていた、警戒している表情ではなくなってしまっているが。
「あぁ……地中を掘り進めたらこんな感じかしらねぇ、あぁそうそう、うんうん」
それを聞いたトーマスは目を見開いて、地面の方に顔を向けた。ビッグアースワームは地中の中で生活している生物だ。変異体だってそれは変わらない。つまりこの微かな振動は、その移動と考えるのが妥当だ。助けもなくちゃんとその事に気づいたトーマスは偉い。
視線を向けたのとほぼ同時ぐらいに、トーマスの足元の土が盛り上がった。それから盛り上がった土がつぶてになって、襲い掛かる。一連の流れが一瞬で起こったが、それを間一髪で横に飛びのけて避ける事ができた。よしよし。助けもなく初撃を避けたのは偉いぞ。私の可愛いトーマスよ。
「あれが変異体」
少し面食らったように呟いているのが、聞こえてくる。
顔というより、ピンク色の頭の様な物が地面から出ている。頭も尻尾の方も同じ形状で判別は難しいが、おそらくあれが頭なのだろう。サイズは子供ぐらいある。事前情報通り。
地中から勢いよく頭を出すことで、つぶてを飛ばしたのか、頭を出したら結果的にそうなっただけか。攻撃手段はまだはっきりとわからない状態だ。
「それにしても、気持ち悪いわね」
まじまじと見たくないフォルムと質感である。今すぐ消し飛ばしてしまいたい。少なくとも触りたくない。
トーマスも同じように思ったのか、戸惑ったように動かなかった。そうしているうちに変異体は地中に潜ってしまった。
そういえばトーマスには、武器を持たせていなかった。魔力の使い方の基礎は教えたが、武器などは全く触らせていなかった。私が必要としないから、失念していたわ。
確かにアレを素手で殴るのは気持ち悪いし、勇気がいる。護衛の兵士から剣をとっておけばよかったわね。
「しょうがない、気持ちはわかるから、すこしだけ助けてあげるわ」




