2-11喉の調子が
その返事からすぐに、トーマスのまとっている空気が変わる。最初の頃とは見違えた。初めて出会った時、愚物と対峙した時はこんな空気をまとっていなかった。
ここ最近は魔法の指導をしている。と言っても基本部分だけ。外魔力と内魔力で枝分かれしていくより前の部分だが、教えている印象では才能があると感じる。そろそろちゃんとした内魔力の使い手の指導者をつけてやらないと、伸びる物も伸びない。魔法学園に入学するまで待つこともアリなのかもしれないが、早いうちから伸ばした方が到達点は高くなるだろう。
「わかっていると思うけど、私は手助けしないわ」
それだけ言って後ろに下がる。ビッグアースワームはなぜか巨大化し凶暴になったが、おそらくそれほど強くない。それに私が地中に向かって魔法をぶっ飛ばすと、農地予定地が荒れてしまう。正直に言って面倒だったのだ。それに助けすぎるのは成長の妨げになる。
「……知能も高くないし強い害獣ではないから、いろいろ察知する能力は高くないわ、だからこちらに気づかない可能性がある、歩き回ったほうが良いかもね」
トーマスが一向に動く気配がなかったから、それだけは伝えたほうが良いと思ったのだ。これは手助けとかではない。
「なるほど」
ずっと立ち止まっていたトーマスが、そう返事をしてから歩き始める。少し慎重に歩みは遅い。そこまで慎重にならなくてもいいと思うけど、初めてだからしょうがないか。
そうしてしばらく歩いていると、地中からかすかに振動を感じる。こちらに気づいてビッグアースワーム変異体が、地中を移動しているのだろうか。
トーマスに視線をやると、真剣な面持ちで歩を進めているが、気づいたという感じの反応は見られない。まだまだだな。感覚が研ぎ澄まされていない。もしかして、正々堂々と目の前に出てきてくれるとは考えていないよね。不意打ちもちゃんと警戒しているよね。
「ううっん! あぁ、なんか喉の調子が……うおほっん!」
「ヴィオラ様、風邪ですか? 大丈夫ですか?」
せっかく警戒していたのに、トーマスはこちらを振り向いてそんな風に声をかけてくる。
「大丈夫よ! それより集中を切らさない! ううんっきてるっおっほん!」
不思議そうにするトーマス。集中が切れている。
「いいから、集中なさい……うおほっわーむっん! きてるんんっ! ちょっと喉の調子が悪いだけなのよ」
「そう、ですか……」
呟くようにしてからトーマスは視線をもとに戻して、警戒しているといった感じの表情を浮かべる。それを見る限り、警戒している気になっているだけかもしれない。先ほどより地中の揺れが近づいてきているが、気づいている風ではなかった。




