2-10農地予定地に到着
「広いですね、それに何の変哲もない感じです」
二人で馬車から降りて、農地予定地を眺めているとトーマスがそうもらした。広くはないだろう。森の中にちょっとした広場があるという感じだ。だが森といっても密集度は高くない。木々の間から先の景色が見えているし、上空も日差しが遮られていないから明るい。周りの木材を、家づくりにそのまま利用できそうだ。そうやって木々を伐採していけば、適度な広さになるだろう。
「馬車はここから離れていなさい……護衛の兵士も残る必要はないわ、全員で馬車を守って」
壊されてしまったら、帰りが絶望的だ。歩いて帰るなんてごめん被る。
「し、しかしヴィオラ様、護衛の我々が離れてしまうのは」
「あ?」
口答えしてきた兵士に、威圧の言葉をかける。そんなつもりはなかったのだが、魔力が体からほとばしってしまった。口答えをした兵士の足元に、魔力が弾ける。それを見て兵士が「ひっ」と小さく悲鳴を上げて後退った。
夕食時までに帰りたいのだ。今日は特別なものを手配している。トーマスの初害獣討伐のお祝いとしてだ。こんなところで押し問答をして、時間を浪費している暇はない。
「あなた程度の物が、私の決定に異を唱えるなんて事、無いわね?」
「申し訳ありません!」
兵士たちが少しよろけたようにして片膝をつき、頭を下げる。私しかいなかったら、口答えした兵士を問答無用で消し飛ばしていた。トーマスがいて命拾いしたわね。
「早く行きなさい」
怯えて動けなかったという状態から、やっとの思いでと言わんばかりに兵士たちは馬車を動かしてその場を離れていく。無駄な時間を過ごしてしまったわ。
「ヴィオラ様、良い感情を抱いていない者に厳しい態度をとられるのは分かりますし、あの人たちの自業自得だとも思います……しかし、そこを抑えて優しく伝えてあげれば、あちらも心を入れ替えるのでは」
苦笑しながら、トーマスがそんな事を口にする。利用価値がある者以外に、良い顔をするのは面倒だ。まぁ権力を持っている者に対してなら、へりくだるのもやぶさかではないが。
それに、今更私への評価は変わりようがない。奴らも今頃、陰口をたたいているだろう。そのような愚物に、気を使ってやるのはもったいない。
「まぁ、考えておくわ」
トーマスの助言だから、一応検討リストには入れておこう。他の者なら聞く耳を持つ気はない。
「それより、ここはもう害獣の縄張りよ、余計な事を考えていないで、集中なさい」
「はい」
苦笑を浮かべてトーマスは返事をした。




