2-8討伐対象は……
「……正確に言うと、人間以外の生物であり、人間に害を及ぼしたと認定を受けた個体を害獣というのよ」
大体の害獣は魔法生物で、一部通常生物だから、間違いではない。ただ「人間以外の生物」という表現には意味があるし「認定を受けた個体」という表現も欠いてはいけない。受け取った言葉を自分の中で咀嚼したのはいいけど、理解が足らないせいで少し間違った形で覚えてしまったという所だろう。そのうち具体例を目の当たりにする機会があるだろうから、今は詳しく話さないが。
「今回討伐予定の害獣は?」
「ビッグアースワームの変異体です」
私の問いにトーマスは淀みなく答える。というかここで躓いたら、さすがに鳥頭過ぎる。続けて質問を重ねていく。
「特徴は?」
「ビッグアースワームは成人男性ほどのサイズですが、害獣のそいつは子供の等身大ほどあるらしいです、本来ならそんなに大きくならないそうです」
五年ほど前にたまたまそこを通りかかった者が、襲われた。街道からそれなりに離れた場所なのに、どうしてそんな所をたまたま通りかかったのか疑問ではあるが、当時そこはうやむやになっていたのか、記録は残っていない。ただの気まぐれだったという事だろう。
その者が通りかかったおかげで、そこに肥沃な土地があるのが記録に残って、私たちの助けになったのだ。多少の事は目をつぶる。
「でも、どうして今まで放置されてきたんでしょう」
首をかしげながらトーマスが疑問を口にする。
「人間を襲うけど、近くに人が住んでいる場所もなく、移動する気配もなかったから、緊急で討伐する必要がなかったのよ、そして何よりビッグアースワームの価値は土を豊かにしてくれるところにあって、その死骸に価値がないわ、その肉を食用にしようと考えた人もいなかったみたいだし、魔法素材として使える訳でもない……討伐しようと考える者がいなかったという事よ」
今回私達が討伐しようと考えたのは、農地として最適だからだ。いろいろな条件に合致したのはもちろんだが、なにより通常のビッグアースワームが残っている可能性もあるし、いなくても土地はかなり肥沃になっていると思われる。
近くにこんな場所が手付かずの状態あるなんて、やっぱり私は幸運だわ。
「害獣は討伐すると、お金になるんでしたね」
「討伐者と領主と国で素材価格の折半になるわ、食用肉として人気の高い生物や魔法素材になる生物が害獣認定されれば、害獣討伐で生計を立てている者たちが群がる」
「ビッグアースワームが討伐されない訳ですね」
トーマスは納得したように苦笑を浮かべた。私もそれに対して「そうね」と返しておく。
それから少しの沈黙が流れて、トーマスがふと呟いた。




