2-6裏の計画
「まぁ、大丈夫よ」
トーマスを安心させるため、そう告げる。根拠はあるのだが、トーマスには聞かせられない。というかトーマスは正義の心を持っているから、確実に反対する。場合によっては、離反だってあり得るだろう。私は、トーマスを処分したくないし、トーマスによって処刑されるのもごめんだ。
私の考えを知りもしないトーマスは、いつも通り子犬を思わせる笑顔で「はい」と声をあげる。少し嫌な事を考えてしまい、今ばかりはキュンとはできなかった。
「……とりあえず」
少しだけ変な間が開いてしまったが、そう口を開いて手を一度叩いて続ける。
「本格的に動き出せるのは少し先になるわ、トーマスとルーはこの話を頭の片隅に置いて、いつも通り過ごして、頼みがあればその都度指示するわ」
二人が元気よく「はい!」と返事する。元気な事だ。心というか内面が大人の状態の為、ほぼ同じ歳のはずの二人を、子供を見守るような気持ちになって眺めてしまう。私も丸くなったものね。こんな気持ちは抱いたことはなかったのに。
ほっこりしていると、アリードがルーに対して「少し良いかね」と声をかける。なんだろうか。また私の知らないことが、勝手に進んでいるのではなかろうな。
「ルーナ君に、少し頼みたいことがあるのだよ」
「何でしょう?」
ルーが不思議そうに問い返す。というかルーの名前って、ルーナと言うのか。初めて知った。そういえば確認してなかった。ボロを出す前に聞けて良かった。覚えておこう。
「ヴィオラ様が呼んだ者たちが、新しくできる市場街に店を出すという事を、君の情報網を使って噂として広めてほしい、もちろん今からでは早いからまだ準備に留めておいてほしいが」
「わかりました! 指示をいただいたときに直ぐにうわさが広まる様に手配しておきますね!」
自分にも役割を与えられたというのが相当嬉しかったのか、喜んだ様子で返事をした後、小躍りするように部屋を飛び出していくルー。張り切ってくれるのはいい事だ。しかし、情報網って何ですか。それについて知っていたのかトーマスは特に驚いている様子もないし、私だけ把握してないという事か。
内心で戦々恐々としていると、トーマスが声をあげた。
「おれ……私も仲を取り持てるように、少しスラムに顔を出してきます!」
あっキュンッ。張り切った様子のトーマスは、投げたボールを取りに行くような可愛らしさがあった。そうして部屋を出ていく姿もまた。
私は少し余韻に浸る様にほくほくした後、顔を引き締めてアリードを見る。アリードは陰がかかった表情をした。前にスラムの愚物を消し去った時の様な顔を、私はしているのだろう。
「従わない愚物は掃除するわよ、具体的なタイミングは……」




