2-5計画
「私ではヴィオラ様の考えに及びません、質問する愚行をお許しくださいますか?」
アリードのそんなへりくだった言葉に、正直肝が冷えるのを感じる。知力はあなたの方が上だわ。今さっき私があなたの考えに及んでいないことが、証明されてしまったんですから。
とりあえず、情けない姿を見せてアリードに失望されるのはマズイ。それだけで処刑に近づいてしまう。何でもない風を装って「許す」と頷く。アリードはそれを聞いて恭しく頭を下げてから、口を開いた。
「ある程度の人気を持つ者から協力を得られるのは理解しました、しかしスラムの者たちはいかがいたしますか? 強制退去しかない様に思えますが」
「先ほども言ったでしょう、スラムの者たちでも店を出せると」
この事については、かなり自信がある名案を考えてあった。さぁアリードよ、問うがいいわ。
「それは理解していますが、スラムの者に何が販売できますか? 何も持っていません、働かせてもらうという事さえできない状態にある」
「だから、農地を開墾させるのよ……それでスラムの者たちは販売する物を得られる、生活水準をあげられる、私たち側としては未開発で無駄になっていた土地が開発される……将来の話になるけど最終的に食料備蓄用に借地料として何割かそこの農作物を収めさせる、もちろん個人の税も納めさせる」
実は私が魔法学校を卒業してから少し経った頃に、領地内が部分的に飢饉になる。国の南側で日照りが続いてしまうのだ。我が領地の南側が少し飢饉にかぶるせいで、迷惑をこうむる事になる。その時は領民への税を増やして、貴族たちは生活水準を維持した。しかし、それもやはり革命の一助となったのは明らかである。
アリードが一瞬だけ目を見開いて、それから「なるほど」と深く頷いた。納得したらしい。さすがに飢饉の話をするわけにいかない。遥か未来に起こる事。信用させる証拠なんてないのだ。まぁ備える事に反対などしないだろう。今しか見ていない、豚でもあるまいし。
「でも、農地ってどこに……それにそこにスラムのみんなを移住させる事になりますよね、ちゃんと言うとおりにしてくれるでしょうか」
トーマスが不安そうに口を開く。おそらくトーマス自身が苦しめられてきた、あの愚物を思い浮かべたのかもしれない。まぁあいつはもう消し飛ばしたが、あいつだけではないだろう。スラムに巣くっている愚物は。
「……それは賭けね、正直予想もつかないわ」
何かするようなら、掃除をするだけだ。消えてもらう。和を乱されて私の計画に支障がきたされるのは我慢ならない。
一応、アリードに視線を送ると、少し陰がかかった表情をして小さく頷いて返してきた。私の意図をキチンと理解しているらしかった。やっぱりアリードは参謀として不可欠だ。




