2-4もしかして、このために
「その市場では、誰でも店が出せるの……それで平民も努力すれば富を築けるわ、もちろんスラム街の人間でもね」
私の言葉を受け止め、アリードが少し考える様にする。それからポツリと口を開いた。
「商業特区……ですか」
「まぁ、そうなるわね」
平民は今より稼げるようになれば、税収を増やせる。つまり私が贅沢を増やせるという事だ。
「……国の意向に明らかに沿っていない」
アリードが険しい顔でそう告げた。私はそれにすぐ答える。
「しかし、法的になんの問題もないわよね」
国の法。国令に照らし合わせれば、問題がないのは明らかだ。認可は誰にでもおりる。領内の法である領令を少し変え、認可を簡略化しなければ気軽な市場というのは難しいが、些細な問題だ。
「覚悟はあるのですね」
アリードが真剣な表情で問いかけてくる。国の意向に真っ向から反発するのだ。当たり前の反応だろう。
「もちろん」
もちろん私は不敵な笑みを全開にして即答した。
「よろしい、私が全力でお手伝いいたします」
珍しくアリードは不敵な笑みを浮かべていた。そういう顔もできるのね。楽しくなってきたわ。
「あっ、もしかして」
突然、ルーが声をあげる。何かを思い出したという感じだ。
「このために、いろんな人を呼びつけて……」
何の事だろう。ちょっと意味が分からずにいると、アリードが目を見開いて、興奮した様子でまくし立て始める。
「そうか、ヴィオラ様が呼びつけていた者たちは皆、雇われた平民でトラブルを抱えていた、しかもおそらく雇い主の貴族から理不尽に責任を押し付けられていた……現状に不満を持っている、彼ら彼女らなら、市場街に賛同して積極的に協力してくれるだろう、さらにはすでにある程度の人気を持っている者たち、その店が簡易の露店だとしても出店されるとなれば、スラムに足を踏み入れるという抵抗感も多少は薄れる……さすがヴィオラ様、そこまで考えて」
アリードの言葉の量に、ちょっと気圧される。な、何の話でしょうか。ト、トラブルとはなんだ。いや、今ここで焦った姿を見せるわけにはいかない。
「え、えぇ、そうよ」
髪をかき上げながら、華麗に装う。何の話か全然分からないが、とにかく話を合わせておけば何とかなる。
気づくとトーマスとルーが、目を輝かせてこちらを見つめてきている。ちょっと視線が痛いのだけど。ただ贅沢をしたかっただけなんですけど。それなのにそんな素晴らしい人を見る様な視線を向けられると。
「ふぅ……申し訳ありません、少し取り乱しました」
いつもの調子に戻ったアリードが、頭を下げながらそう詫びた。詫びられるとなんか申し訳なくなるわ。




