2-3次の改革は、スラム街を変える事よ
「さて、では本題に入るわよ」
その言葉に合わせて、三人が期待を込めたまなざしを向けてくる。そんな大したことを言うつもりはないのだけど。というか贅沢する事を優先して後回しにしていたのに、アリードが「ついに機が熟しましたか」と呟いた。違うから。期待されすぎてしまうと微妙な事を言ってしまった時に、失望が大きくなってしまう。慎重に言葉を選んで、それを口にする事にする。
「えー、次の改革は、スラム街を変える事よ……まずはトーマスがいたスラム街からね」
「おれ……コホン、私がいた街ですか」
まだ私という一人称に慣れていないらしく、トーマスはよく言い間違える。それはそれで可愛らしい。グへへ。おっと、違う。ほほえましく思いながら、その問いかけに頷いて返した。
「そうよ、まずはあそこから、うまくいったら領内のスラム街を同じようにして、納税していない者を無くすわ」
今スラムに溜まっている者たちはどれぐらいいるだろう。皆、納税の義務を放棄している。無い物を強引にとる事もできないため、結果的にスラム街の様な場所が出来上がってしまう。それらの者が、すべてキチンと納税したらどうなるか。相当の税収が見込まれるはずだ。
我が父上は愚物など捨て置け、とばかりに何も手を打っていない。というより国全体でその傾向がある。正直馬鹿なのだろうか、とさえ思う。働いていない者が働いたら、人手不足なんて起こりはしないし、税収は増える。いい事しかないのに。難しい問題というのはわかるが、考えもしないのは愚の骨頂だ。
「変える、と言っても……それはかなり難しい」
難色を示すアリード。そう、難しいのだ。つまり具体的な方策を求めてきている。
「もちろん具体的な方策は、ちゃんと考えてあるわよ、安心なさい、アリード」
かなり自信のある方策だ。その自信がつい声を弾ませてしまう。
「ふふんっ、スラムを市場街に変えるわよ!」
市場という言葉に、三人が驚いた顔をする。かなりサプライズ的な方策。そのせいで驚いたのだろう。
理由は簡単。この国では商売は認可制になっている。しかし、例によって貴族が独占しているのだ。一応誰でも認可が下りれば、商売をすることができる。だが、富を独占したい、平民に力を持たせたくない貴族が、それを許すはずがない。よってこの国には市場という、気軽な商売の場が存在しないのだ。平民は従業員として雇われ、安い給金でこき使われる。これも立派な社会階級の固定化だろう。




