2-2身支度の最中ですので
「ヴィオラ様、アリードです、入っても?」
部屋の扉がノックされて、そんな声が聞こえてくる。今まさに取り込み中だが、私は特に問題ない。
「いいわ、入りなさい」
「良くないです!」
私の言葉を予想でもしていたのか、ほとんど同時にルーがそんな声をあげた。それから焦ったように言葉を続ける。
「身支度の最中ですので、もう少しだけお待ちいただけますか、アリード様!」
「……もちろんです」
扉の向こう側から、アリードの返事が聞こえてくる。とりあえず何を言っても無駄そうなので、されるがまま身を任せた。
もうほとんど終わりかけだったのか、それから時間はかからず着替えが終わる。やれやれだ。ルーは最近ますます、言う事を聞いてくれない事が多くなった。口うるさくなったというか。
「もういいかしら? ルー」
「はい」
にっこりと満足げな笑顔を浮かべて、ルーが頷く。それからトーマスが控えている隣まで移動した。
「アリードいいわよ、入りなさい」
その声に合わせて、扉が開く。表情は変わりがなく、怒っている様子もない。
「悪いわね、仕事を抜け出して来ているのに、余計な時間をとらせたわ」
「何の問題もございません、あの仕事場ではすべてが無駄な仕事でございます」
なかなか辛らつだが、確かに父上の指示には自分達貴族が私腹を肥やすための思惑が、大量に含まれている。私だけが私腹を肥やせれば、それでいいというのに。これ以上肥えて醜くなるつもりか。あの豚は。
「……では変えるために、次の行動を起こしましょうか」
鏡台からベッドの方へ移動して腰掛ける。三人が並んでいる正面にくる形だ。三人は思い思いに返事をした。良い返事だ。それにしても。
「……執務室が欲しいわね、なんだか締まらないわ」
私の理想は、重厚な事務デスクに座った私が、正面に並ぶ三人に指示をする。そんな姿だ。今の状態とは程遠い。
アリードが何かを言いたげにしてから、それを飲み込むようにして顎を撫でる。何かいい方法、いい場所が無いか考えているのだろうか。
わかっている。現状では私たちは、ただ悪だくみをしているに過ぎない。領地経営を任されている訳ではなく、領主の意向に反抗しているだけなのだ。
「アリード、いいわ」
現状は我慢するしかない。我慢しなければならない。非常に不本意だが。私とあろうものが我慢なんて、信念を曲げる行為だが。来るべき日まで、感づかれるわけにいかない。警戒されるわけにいかない。アリードが「申し訳ありません」と呟くようにもらす。




